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2010-09-14 20:37

民主主義と説明責任

入山 映  サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
 オバマ大統領は、イラクからの戦闘部隊の撤収を宣言した。思い起こせばブッシュ大統領時代の2003年3月、フセイン政権が大量破壊兵器(WMD)を開発・所有しているとして侵攻。結局それは見つからないまま、石油利権だけはちゃっかり入手(それが本来の目的だったという論者もいる)。お定まりの民主主義政府の樹立に向けての努力は、一応の国政選挙の実施と、民主的連立政府成立を以て結実したと評価。後はイラク人自らの手による治安維持に向け、治安部隊の訓練要員のみを残し、戦闘部隊は憎さも憎いアルカイダをアフガニスタンで掃討する目的のもののみとする。4千人を超える米軍兵士の死者を出して、イラク戦争の終結である。

 イラクという国で曲がりなりにも普通選挙が実施された、という事実を評価する人は多い。しかし、あの国に民主的政府が成立していると信じる人も、極度の腐敗が蔓延しているという事実を否定する人も、多部族国家における規範的な政治モデルが成立したと思う人もいない。しかし、とにかく最小限の泥沼化に留め、戦闘部隊5万人を撤収させたオバマの決断は評価されてよいだろう。何よりも、国民に向かってイラク派兵の歴史と意義をしっかりと説明した彼の態度は、いまだにそれが痕跡程度にすらなされていない日本の現状と対比すると、民主主義と説明責任というものに対する蓄積の差を感じる。

 もちろんオバマの15分間の演説は相当なきれいごとであったことは事実だし、それが米国の(誤れる)政策選択を遡って是正する機能などまるでなかったのも確かだ。しかし、一身上の金銭疑惑についてさえまともに弁明しようとしない与党の領袖がいたり、恥知らずに調停者気取りで表舞台に未練を残す「終わった」鳩が飛んだり、歌声喫茶の時代ではあるまいし、古証文のトロイカを尊重するなどと世迷いごとを言う首相がいたりする日本から見ると、大衆に向かって発信するメッセージの質の高さは羨望に値する。

 羨ましがっていても始まらないから、出来ることと言えば、この際の去就と発言内容をしっかり記憶に留め、どの政治家は信頼に足るか、どの政治家は気骨があるかを認識しておくことしかないだろう。それにしても、闇将軍の傍に立ってにっこり微笑んでいたり、壇上で握手しているタレントまがいの女性新人代議士諸君に対して、他ならぬ女性評論家の皆さんから手厳しい論評が加えられても良いのではなかろうか。国民的アイドルのやわらちゃんをこんな形で薄汚れた存在におとしめたのもさることながら、代議士をコンパニオン扱いする感覚や、喜々としてそれに従っている有様には、タイム・マシンに乗って一時代昔に旅した心地さえする。
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