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2010-09-10 07:41

自民、政権奪回に最後の切り札

杉浦 正章  政治評論家
 自民党が総選挙向けに短期決戦態勢とも言える布陣を敷いた。3役が50代に若返り、民主党代表選挙後の激動期対応型シフトだ。新幹事長の石原伸晃は就任早々、民主党への攻勢を強める姿勢を鮮明にさせた。自民党は解散・総選挙も視野に入れて、政局の常在戦場化を図ってゆくことになるだろう。人材枯渇の自民党最後の切り札執行部だ。新シフトの目玉は何と言っても石原幹事長だ。テレビでの論争を聞いても、二代目的な押しの弱さが欠点だが、論客としては現在の自民党ではトップクラスだろう。1998年の金融国会で民主党と金融再生法案の修正協議を進め、野党案をほぼ丸のみにして金融危機を回避するという荒技もこなしている。「政策新人類」の筆頭となった。総裁・谷垣禎一とは2000年の「加藤の乱」で行動を共にして以来の親密な関係にある。大島理森が副総裁に昇格したのが目の上のたんこぶだが、「院政」は甘んじて受けた方がよい。古い自民党の象徴のように批判されているが、大島の政局観はちょっとしたものだ。

 口から生まれてきたような小池百合子、留任の石破茂とともに「テレビ討論対応型人事」ともいえる。小池は海千山千の総務会をリードできるか危ぶまれる。従来はベテランが総務会長になっていたから意外な人事だが、最近の総務会は小粒になっており、運営はそれほど難しくもないかもしれない。谷垣は最初、政調会長に参院議員の林芳正を考慮したが、林が参院議員会長選で落選候補を応援したあつれきが残っていて断念したようだ。石破は若手に評判がよく、ネット上でも人気がある。やはり押しが弱い林よりは石破の方が激動期向けだろう。波乱不可避の国会の最重要ポストである国対委員長を、川崎二郎から逢沢一郎に交代させたのは賢明だった。川崎は自民党単独での審議拒否や「政治とカネ」の追及不足など拙劣きわまりない国会運営をしており、ブレーキ打者だった。

 新執行部は基本的には対決路線を選択せざるを得まい。谷垣は円高・株安に伴う景気悪化も踏まえ「戦うべきところは戦うが、国民生活のため協力すべきところは協力する」と述べ、景気対策や国民生活関連法案などへの柔軟姿勢を見せている。しかし民主党代表選は、菅が勝っても激動期の幕開けをもたらすだろう。「政治とカネ」を焦点にした対決姿勢が、政党の攻防のカギを握る。そのためには参院で達成した“ねじれ”をフル活用するしかない。政党の攻防に甘さが入り込む余地はない。責任政党論も床の間の飾りとしては大切だが、それにこだわっては政党は成り立たない。「敵失」などはフル活用して、隘路を抜け出すのが基本だ。通常国会における早期解散・総選挙の実現が新執行部最大の課題となるだろう。

 自民党は人材枯渇だ。幹事長に石原を据え、小池を総務会長に起用したらあとはろくな人材がいない。最後の切り札たるゆえんだ。総選挙向け短期決戦の布陣だが、長期戦略としては人材育成から始めなければ、豊富な中堅層を抱える民主党に対抗できまい。自民党の人材育成はこれまで派閥がその役割を果たしてきたが、派閥はもうとっくにその機能を失っている。党が機関として「2世」でない人材を育成してゆくべきだろう。それにつけても民主党代表選は8日に筆者が踏み切った「菅、サポーター票軸に逆転優勢の目」の流れが加速して、読売、NHKと産経が追随した。他紙や通信社は度胸がないのか洞察力・判断力・分析力がないのか、もたもたしている。
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