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2006-07-03 07:11

NPT原理主義の世界的守護神となる覚悟ありや

池田 洋  雑誌記者
 6月26日付けの「JFIRコラム」に伊藤憲一氏の論説「核拡散避けられぬ現実を見据えよ」が掲載されたのに呼応するかのように、朝日、読売両紙が翌々28日の社説でともにこの問題を取り上げたのは、興味ある展開であった。朝日は「米印核合意:首相は同意するな」であり、読売は「米印原子力協力:核不拡散体制を維持できるのか」である。

 朝日は「米政権の論理は明らかな二重基準であり、こんな露骨な二重基準を認めては話にならない。首相はこの立場をブッシュ大統領にはっきりと表明すべきだ」という。いつものきれい事好きの建前論だが、それじゃインドとの関係はどうするのかというと、「核不拡散の立場を主張しつつ、インドとの関係を強化するのは矛盾することではない」そうだ。結果に責任を取らず、その時その時気取ってみせるだけの空論だから、いい気なものだ。

 読売はというと「日本はどういう立場をとるべきか」とボールを投げておきながら、ライス国務長官の言う「米国にとっての戦略的プラス」の紹介に終始していては、社説にならない。そこで「米印合意はNPT枠外のインドを特別扱いしている。これではNPTの信頼性を維持できない。それを明確にせずにインドと原子力協力をするのは、筋が通らない」と結論してみせた。読売も「核不拡散の立場を主張しつつ、インドとの関係を強化するのは矛盾することではない」と主張するつもりなのか。

 要するに、両紙とも、この問題を伊藤氏が考えたように突き詰めては考えていないということだろう。いまこの場を言い抜けられれば、それでよいという、売文保身主義だ。もちろん、伊藤氏の論説は(同じ26日の産経に掲載されているのだから)両紙の担当論説委員殿がこれを読んでいないはずはない。しかし、伊藤氏の指摘する「最終的局面を予測する長期的展望」には、恐くて踏み込めない、そこまで考えたくないということだろう。日本には米国、インドに楯突いてNPT原理主義の世界的守護神となる覚悟(意志や力、そしてなによりも国益)はあると言えるのか。せめてそのくらいのことまでは考えた上での社説執筆であってほしかった。
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