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2010-08-26 10:07

(連載)50歳定年制のススメ(2)

森 浩晴  大学講師
 ここは考え方を少し変えて、新卒者や若者に雇用そのものを世代間供給してしまうことを発案してみたい。端的に言えば、65歳定年制などというものは論外で、いっそ50歳定年制くらいを法制化し、そこで浮いた中高年の雇用枠を、新卒や若年者に振り向ける方策です。

 先ず能力面ですが、皆様方経験則でご承知の通り、所謂「仕事ができる」というのは、若ければ若いほど能力・資質共に高い傾向があります。40代、50代の中高年になれば、能力は若年者に比して格段に劣って来る訳ですが、通例、サラリーマン組織では年功序列の錦の御旗の下、経験やその場に長いという抽象的な理由で、年長者が高い職階に就き、組織全体の効率を歪めている次第です。経営側からすると、能力面で劣る中高年を高額の労務費で雇わねばならない、というダブルダメージをこれまで強制されてきたことになります。この分野が20代等の若者に置き換わるのであれば、企業経営からすれば、人件費は極端に低廉になり、仕事の効率も増すということで、飛躍的な支援になって参ります。

 つぎに問題点でありますが、雇用枠の「禅譲」については、企業側も学生・若人も欣喜雀躍なのですが、当然、一番反発するのは中高年の現役労働者です。「自分は、滅私奉公、会社のために己を棄てて精励してきたのに、例えば、50歳で定年になってしまっては、生活も老後の設計も全く滅茶苦茶になってしまう」との反発が予想されます。いくら日本人が勤勉で倹約家であると言っても、誰も50歳で定年となった後の生活設計を賄う預金を持っている方ばかりではありません。従って、いきなり50歳定年制にするのでは無く、漸減的、経過的に、59歳、58歳・・・と1年ずつ短くしていき、最終的には50歳定年制にしていく、というソフトランディングを提案してみたく存じます。

 50歳定年制が実現し、普遍化すれば、今の超高齢社会と背反する様なことになるのではないか、というご指摘もありそうですが、ここは逆の発想で良いのかもしれません。現在の超高齢社会に対するその場しのぎの対処療法が65歳定年制であり、定年後の再雇用制度であります。やたらと平均寿命が延伸化しており、老齢期の時間が延びたがため、その分勤労者であり続ける時間を少しでも延命しようという処方箋であります。しかしこれは、本人にとっても、雇用する会社にとっても、不幸な制度であります。日本のサラリーマンほど、会社に時間や私的な自由を捧げている方々はおられません。その拘束生活が60歳のみならず、65歳や、場合によってはそれ以降も継続するということは、たった一度の人生しか無いご当人にとっては大変辛いものであります。また雇用する会社側からしても、先述と同じになりますが、決して能力が高くない高齢人材をいつまでも雇い続けるというのは、カウンター・バリュー的にも二の足を踏むところです。(つづく)
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