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2010-08-25 16:26

(連載)50歳定年制のススメ(1)

森 浩晴  大学講師
 机上数値やマクロ的視点では景気が持ち直したとか、寧ろ復興の兆しが見えるとか、といった観測が各般でなされています。巨視的経済の立場からは、これらは誤ってはいないのでありましょう。しかしミクロの観点では、現況は凄まじいことになっております。私議、いくつかの大学に出講して、学生の生の声を聞くにつけ、現在の超雇用不況は少し奥が深い、深すぎる様に見受けられます。

 たまさか自分の娘が大学4年であり、この超氷河期とまともに対峙するはめになっているのですが、その惨状たるや、やや想像を絶する感があります。先ずは、PCにて、エントリーし、エントリーシートを書きます。この時点で、数十万人の求職学生が一挙に数百人にまで絞り込まれます。企業人事側からすれば誠にロジカルで、パフォーマンスの高位なシステムなのでありましょうが、学生個人個人からすれば、砂漠に落ちた一粒の宝石を探し出すような作業であります。エントリーシートが通過する確率は、正に宝くじ当選に比肩する超低位なものであります。受けては落ち、受けては落ちの徒労の繰り返しであり、これで精神的に病まない方がおかしい、とも言うべき惨憺たる状況が続きます。それでも何とか、エントリーシートが受託され、集団討論にまで進んでも、その後企業によっては八次面接辺りまで設定しているところもあり、一体どのような学生が最終的に内定を得ていくのかは、皆目検討も付かない様態であります。自分の娘にせよ、大学での教え子にせよ、「内定を得た」という話を聞くことは全くありません。

 大雑把なくくりで言うと、今の学生の二人に一人は無職のまま卒業する(卒業させられる)状況にあります。文部科学省の統計でも、大学卒業者の60.8%しか就職しておらず、この6割の中身には、当然、非正規雇用(アルバイト、パート、派遣社員)が入っており、正社員就職が叶っている者の割合は果たしていかほどであるかは、未知であります。日本全体で非正規雇用者が1,800万人近くおり、就労者の3人に1人が非正規雇用という、正に世紀末的な格差が、当たり前のように横行しております。ここまで広がった雇用格差社会に若い学生が心を折りながらも挑んでいる現状があります。若い方に絶望しか与えない今の日本の社会システムに、何か光明を見出す策は果たして無いものでありましょうか。
 
よくワーク・シェアリングの話がメディアに出て参ります。言わずと知れた、漸減した労働分配に按分して、賃金も配分し、皆の雇用を守ろうと言う仕組みであります。しかし今の絶対的に雇用パイが不足している労働市場では、ワーク・シェアリングにも限界があるものと思われます。雇用パイの絶対的不足は、リーマンショック以降、更に言えば、バブル崩壊以降の不況や少子化影響も大きいですが、各種分野での省人化や空洞化により、雇用市場に於ける需要曲線が極端に萎縮していることが、大きな原因として考えられます。(つづく)
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