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2010-08-18 07:27

山岡主導の「小沢擁立」論は見当違い

杉浦 正章  政治評論家
 代表選挙に向けて民主党内のボルテージが上がってきたが、どう見ても見当違いの方向に走っているのが、「反菅直人」の牙城「09公約の原点に返り『国民の生活を守る』集い」だ。小沢一郎擁立を目指して、副代表・山岡賢次が狂ったように旗を振り始め、8月17日の会合でも「小沢擁立論」が圧倒的だった。倫理観の欠如を政治家に説くのは、八百屋でタコをくれというように無駄だが、「集い」は「脱小沢」を支持する国民世論を「敵」に回しての代表選戦略が成り立たない事が分かっていない。

 名指しこそしなかったが、山岡が敬語を使って「19日に具体的候補者をまとめて『ご出馬』いただく」と言うのだから、語るに落ちた。その意味は「小沢擁立」しかありえない。この動きをするに当たって、小沢側近の山岡が小沢本人の意向を忖度(そんたく)しないことはあり得ないから、少なくとも山岡は小沢に「私は擁立で走りますから」と事前了承を求めているに違いない。小沢は明解に返事をせずに「うんまあ、むにゃむにゃ」位の返事だったのだろう。これをうけて山岡は数人の議員に「小沢擁立論」をぶつように事前根回しをして、「集い」があたかも擁立論で一致するかのように演出した。しかし小沢が本気かどうかは疑わしい。山岡の一人芝居となりうる要素が山積している。18日付読売新聞によれば小沢グループの党総務委員長・奥村展三も「『小沢氏を出す』という議員は、小沢氏の意向を確認したのか。憶測で動いたら、小沢氏を傷つけてしまう」と山岡批判を展開している。

 「集い」は、「短期間で代表が代わるのは好ましくないという俗論に流され、現体制が追認されれば、国民の期待を裏切ることになる」という文書をまとめたが、これは180度国民の「期待」を見誤っている。世論調査における菅続投論は60%前後あるのに対して、次の代表に小沢がなることを否定するものは80%に達している。これを山岡は「俗論」と見るのだろうか。小沢擁立となれば、新聞・テレビは確実に「政治とカネ」の問題と連動して「反小沢」で動く。ごうごうたる非難の中で代表選が行われることになるのだ。よしんばメディアを敵に回しても、数の論理で小沢が勝ったとしよう。勝てば即「小沢首相」が実現する。その支持率がどうなるかだが、史上初めて支持率が10%台でスタートを切る首相となる。自民党など野党にとって「小沢首相」ほど有り難い存在は無い。民主党の政治姿勢の根本を突けるからだ。発足早々第5検察審議会が強制起訴を議決すれば、首相は何があっても刑事訴追されないが、政界は上を下への大騒ぎとなり、早期解散か、内閣総辞職への流れが、圧倒的となる。

 「集い」が決めた「今の体制では国も国民生活も民主党も成り立たない」という方針がそのまま「小沢首相」へとはね返るのである。要するに、「小沢首相」では民主党は地獄へと落ちるのである。「集い」は「非常事態を解決出来るリーダーの擁立」を決めたが、日本の政治にとって「非常事態」とはまさに「小沢首相」であることに気付かない。小沢はその辺を冷静に読んでいるはずだ。とすれば、山岡の動きを放置する小沢の狙いはどこにあるのか。まずは組織防衛だろう。折から菅が小沢チルドレンの切り崩しと見られる動きを開始し、代表選をめぐる多数派工作が本格化し始めた。数を確保しておかなければ、「小沢城」は落城となりかねない。組織を固めなければ代理候補を立てるにも立てられないし、人事での条件闘争もできまい。将来民主党を割るにしても、数がなければ動けない。鳩山グループとの連携も視野にあるが、鳩山由紀夫は2度にわたって菅続投支持を表明しており、19日の軽井沢研修会がどうなるか見ものだ。少なくとも鳩山は「小沢擁立」に直結させるわけにはゆくまい。
 
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