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2010-08-11 12:14

(連載)「核兵器なき世界」の理想と現実(3)

角田 勝彦  団体役員
 「核の傘」とは、日本の場合、安全を米国の核抑止力に依存して確保しようとすること(拡大抑止)であり、オバマは、プラハ演説で同時に、「同盟国に対する核の傘は守る」「この地球上に核兵器の存在する限り、米国が先に核兵器を廃棄するつもりはない」とも述べている。「核の傘」離脱論について、秋葉市長は平和宣言の骨子を発表した8月2日の記者会見で「『核に依存して安全保障を考えること自体が絵空事だ』という潘国連事務総長の考えを踏襲した」と述べた由である。同市長は6日平和宣言で「こがあな いびせえこたあ(こんな恐ろしいことは)、ほかの誰にもあっちゃあいけん」と述べたが、これは核を全人類破滅につながる特別の存在として、日本が今後核攻撃された場合でも、核による反撃だけは避けて欲しい、ということになるだろう。

 「核攻撃に対する抑止力を通常兵器で担うことはできない」という考えに立つと、「核の傘」離脱は日米安保条約廃棄につながろう。離脱を求めなくても、非核3原則のうち「持ち込ませず」は「核の傘」を無意味にするとの主張がある。米国は冷戦終結後の1991年以降、核弾頭搭載の艦船・航空機を展開しない方針を明らかにしているから、現状では「持ち込ませず」も問題にならないが、朝鮮半島はじめ、その他の東アジア地域に何らかの有事が発生した場合、あり得る核弾頭搭載の艦船・航空機の日本立ち寄りの可能性にどう対応するか、という疑問である。立寄りは拒否するが、「核の傘」は欲しいというのは、図々しすぎるから、同盟は崩壊するとの主張である。

 今後とも「核兵器なき世界」への気運は高まろう。他方、実際の困難は増えていく。たとえば天野IAEA事務局長は、7日の長崎演説で(1)核軍縮の検証(2)核兵器の拡散防止(3)非核兵器地帯の支援(4)核セキュリティーの四つの分野におけるIAEAの強化の必要性を力説した。
 
 「核の傘」などは、基本的に最近の選挙でも示された日本国民の選択の問題である。北朝鮮の核とミサイル開発、中国の軍事大国化という現実を見れば、軍事衝突が発生しないよう、とくに「核兵器なき世界」実現に向けて外交努力を重ねつつ、軍事面ではテロ対策強化を含め、現実的対応を続けていくほかないのであろう。(おわり)
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