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2010-08-10 15:30

(連載)世界金融危機に至るまで(2)

入門 貴男  文化女子大学
 原油取引は安定した米ドルで決済で行われていたことから、当初は産油国の量的な規制は緩やかなものであったが、世界経済全体でエネルギー価格や資源価格の上昇から、インフレーションの懸念が高まり、さらに穀物価格が上昇して、食料危機の兆候が出始めると、産油国の動向にも変化が出てきた。各国はインフレ警戒感から金融引き締めに転じ、米国との金利格差が生じることになったことや、イラクの政情安定の見通しが拡がったことから、2007年以降米国からより金利の高い通貨国への資金移動が起こり始め、米ドルは下落に転じるようになった。



 元々、双子の赤字と言われる財政赤字と経常収支赤字を抱える米国経済にとって、それまでの米ドルの高騰は砂上の楼閣のような存在であり、戦費の出費は米国連邦政府の財政を蝕んでいた。米ドルの下落が進んだことで、米ドル決済で行う原油取引において、原油売却代金の実質収入が減少に転じ、その対策からOPEC非加盟国であるロシアや中南米諸国は原油の量的規制を強化して、価格の一段の上昇を図った。これにより新興経済発展諸国の経済成長による実需の増加や折からの商品市況への投機熱も相まって、原油価格は2008年7月には147.27ドル/バレル(WTI先物)まで上昇した。産油国では余剰利益の資金滞留が起こり、資金の循環が進まず、また各国の金融引き締めから景気の鈍化が起こり、世界経済の停滞が始まった。



 米国では2004年6月30日のFOMCから政策金利の引き上げに転じ、また住宅価格の伸びが停滞しはじめた2006年頃からサブプライム・ローンの借り手の破綻が話題になり始めた。2004年-2006年にかけて米国では住宅ブームが生じ、短期で住宅を転売することにより有利に住宅を購入でき、あるいは転売益が期待できるというものであった。また値上がりによる担保価値の上昇分を担保にさらにクレジットローンを提供するサービスなども登場し、少なからぬ利用者が住宅価格の上昇の恩恵を受けた。



 このローンは借り換え期の4年目以降に急激に金利が上昇する設計となっているため、当初からその危険性は指摘されていたが、住宅価格が上昇する局面ではその警鐘はかき消される格好となり、住宅価格にかげりが見え始めた2006年1月頃(ちょうどブーム3年目にかかる)から不動産担保証券の貸し倒れリスクが注目され始めた。(おわり)
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