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2010-08-05 10:28

テレビの字幕使用に問題あり

大藏 雄之助  異文化研究所代表
 どのような基準に則っているのかは不明だが、テレビの字幕はNHKで50%強、民放で50%弱に達しているという。一般的には聴力障害者以外にとってもプラス面が多い。しかしながら、ニュースに関しては問題がある。日本語の場合、「です・ます調」と「である体」の二つがあり、さらに同音熟語の選択もあるから、複雑であるが、憂慮すべきことは、実際と異なる表現に改めたり、政治家らの不正確な言葉などを修正して日本語字幕に出していることである。これは誤った、余計な配慮である。例えば最近では、北朝鮮に拉致された人々の家族が記者会見で、はっきりと「金賢姫さん」と言っているのを、NHKはすべて「金賢姫元死刑囚」と置き換えていた。音声を聞いていない視聴者は横田夫妻らの発言に全く違った印象を持つかもしれない。

 私の知る限り、アメリカとイギリスでは、ニュースの中での発言は、勘違いや言い間違いを含めて、そのまま即座に字幕に打ち出される。英語の用法では、引用符(“ ”)でくくられた部分はオリジナルのままであり、少しでも手を加える際は、引用符を外して、われわれが英文法で教わった間接話法、すなわち thatクローズ を使う。日本ではこのような厳格な規則はないから、「 」の中に入っていても、たいていは発言者の元通りの言葉遣いではない。

 今から50年ほど以前に私がロンドンで勤務していた時に、労働組合出身のブラウン副首相が、車軸から車輪を支える spoke(輻[や])のことを spike と言った。この人はもともと語彙が不足していることで知られていたが、翌日のある新聞で spoke と正しく表記されているのを見て、本人が烈火の如くいきどおった。「自分が使った単語は確かに間違っていたが、それが誤解を招くようなら注記をすればよい。他人の用語を勝手に言い換えることを許せば、将来重大な事件に発展することもありうる」という趣旨だった。新聞は直ちに謝罪して訂正文を掲載した。

 これはまさしく正論である。日本語のテレビの字幕では字数を減らすために、「してもらいたい」とか「していただきたい」というのが、「してほしい」になっている。こんなことをされては日本語の話し方にも影響する。
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