国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-07-31 11:15

(連載)アメリカは第2のギリシャになるか(2)

中岡 望  ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
 今年度のアメリカの財政赤字はGDP比で10.6%に達すると予想されています。これは1946年以来最高の水準です。残高ではGDPの64%にまで増加すると予想されています。歳出規模も戦後最高のGDPの25.4%に達すると見られています。要するに、アメリカの財政状況は戦後最悪の状況にあるのです。先進国はいずれも財政赤字問題に直面していますが、英米の状況が独仏に比べて悪いのは、経済政策の違いがあるからです。英米は積極的な財政拡張を続けてきました。これに対して独仏は財政刺激策に慎重な姿勢を取ってきました。そうした政策の差が、現在の財政状況の危機度の違いになって現れているといえます。

 そうした状況の中で、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行総裁が、アメリカの財政危機に警鐘を鳴らす演説を行いました。5月16日、イングランド銀行の「インフレ報告」を発表した後の記者会見でマーヴィン・キング総裁は「アメリカはギリシャと同じ財政問題に直面している」というショッキングな発言をしました。またユーロに関連し、「ユーロを存続させるためには、通貨同盟と同様な財政同盟を設立する必要がある」と、現在のユーロゾーンの抱える構造的な問題を指摘しています。通貨同盟で金融政策の一体化やユーロという共通通貨を導入したのですが、財政政策の運用は各国政府に委ねられています。それが今回のギリシャ危機に端的に現れたのです。

 確かにアメリカが深刻な財政赤字問題を抱えていることは事実です。過去において、第2次世界大戦など異常な事態に財政赤字は膨らんでいますが、平時に戻ると、財政赤字も縮小しています。楽観的な見方は、今回も金融危機や様々な異例の事態の中で財政赤字が拡大したので、事態が落ち着けば、財政赤字も減少し始めるというものです。しかし、オバマ政権の予測では、2019年、2020年に財政赤字は再び拡大するとされています。要するに、10年以上にわたってアメリカの財政赤字の縮小は見込めないどころか、逆に増えていく可能性が強いのです。財政赤字の拡大は、ひとつには行政サービスの低下を招きます。あるいは増税が避けられなくなります。また、キング総裁が指摘しているように、市場から資金を“妥当な金利”で調達できなくなります。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム