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2010-07-23 07:30

絶妙な鳩山の「菅続投支持」発言

杉浦 正章  政治評論家
 首相を離れると物事が見えてくる典型的な例が中曽根康弘だ。実に澄んだ政治の見方をするようになった。ひょっとしたら鳩山由紀夫もそうかと思えてきたのが「菅続投支持」発言だ。タイミングといい、方向性といい、絶妙だ。裏には、官房長官・仙谷由人の根回しがあったようだが、代表選に向けて投げかけた一石は大きい。

 かって鳩山は、森喜朗に対して「首相を退任後まで影響力を残したいという人がいるが、首相まで極めた人が影響力を行使することが、政治の混乱を招いている」と述べたものだが、自分の過去の発言を忘却する癖は全く抜けていないようだ。今度の支持発言は「菅総理大臣に代わったばかりだから、しっかりやってもらいたい。現時点では、そう思っている。党内でガタガタやっている余裕はなく、執行部がしっかりと挙党態勢を作る努力をすべきだ」というものだが、3つの条件がついている。菅による消費税発言の陳謝と国家戦略局機能縮小の撤回、脱小沢人事の再調整だ。菅は鳩山グループ60人を意識すればこれを受け入れざるを得まい。

 鳩山は、菅が希望している小沢一郎との会談についても「私が何らかの形で2人の間を取り持つようなことをやらなければいけないと思う」と、取り次ぐ意向を明らかにしている。続投を支持した上で、小沢との関係修復に動くというのだから、菅にとってこれ以上の朗報はない。鳩山を引き込んだ“仕掛け人”は誰かと言えば、仙石と見る。仙石は7月19日に菅と会談した後、夜都内のホテルで鳩山と長時間会談している。おそらく仙石の菅支持要請を受けて、鳩山は条件をつけて支持する方針を示したのだろう。それにしても、仙石の“根回し力”は相当なものだ。

 問題は、22日夜の小沢、鳩山、参院議員会長・輿石東の会談だ。菅は、これに先立ち同日国会内に輿石を訪ね、政権運営への協力を依頼している。菅にしてみれば、鳩山に加えて輿石を味方につければ、小沢への説得力が一段と増すことになる。3者会談の焦点は、鳩山の調整が菅・小沢会談に動くか、それともミイラ取りがミイラになって、鳩山が小沢に取り込まれるかだ。表面的には「3人でこれからも協力していこう」とありきたりの話しか出ていないが、何を要求してゆくかが、おいおい漏れてくるだろう。ポイントは“小沢支配色”を菅がどの程度受け入れるかだろう。

 鳩山が小沢に取り込まれて小沢・鳩山連合となれば、衆参両院の民主党議員数は412人で小沢グループは約150人だから210人の勢力となる。代表選の動向を左右する勢力だ。逆に鳩山の小沢説得が奏効すれば、菅再選の流れが決まる。いずれにしても鳩山発言が代表選に向けて決定的な流れを作るか、小沢グループが戦闘モードに突入するか、事態は瀬戸際に来ていると見るべきだろう。
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