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2010-07-13 10:00

(連載)アメリカ最大の聖域:最高裁判所の実態(1)

中岡 望  ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
 私の関心項目のひとつにアメリカの最高裁判所があります。最高裁に関する資料は随分溜まりましたが、なかなか書くチャンスがありませんでした。今回、最高裁人事に絡んで、書いてみました。最高裁はアメリカの最大の聖域です。かつて映画で「ペリカン文書」というのがありましたが、それは最高裁の人事を巡る内容でした。今後も折に触れて最高裁に関して書くつもりです。

 アメリカ最大のサンクチャリー(聖域)は最高裁である。黒い法衣を着た9名の最高裁判事が、アメリカの政治と社会の方向性を決めているのである。最高裁の内情は秘密に包まれている。ジャーナリストのジェフリー・トービンは自著の『ザ・ナイン』(2007年刊)の中で、「最高裁がどのように運営されているかは、外部から秘密にされている」と述べている。また、憲法学者のマーク・レビンも著書『メン・イン・ブラック』(2005年刊)の中で、「多くの点で最高裁判事は、議員や大統領よりも大きな権力を持っている」と指摘し、「最高裁の9名の判事のうち5名が、国家全体の経済政策、文化政策、安全保障政策の行方を決定することができるし、現実にそうしている」と、最高裁の持つ圧倒的な権力について語っている。

 最高裁判事は、大統領によって指名され、上院によって承認されて、その地位に就く。任期は終身で、自ら辞任するか、死亡するか、あるいは議会から弾劾されない限り、地位は保証されている。しかも、かつて最高裁判事が弾劾によって辞任に追い込まれた例はない。日本のような国民審査も行われない。大統領の任期が最大8年であるのと比べると、その地位の影響力の大きさが分かる。

 大統領にとって最大の仕事の一つが、最高裁判事の指名である。空席がない限り、大統領は最高裁判事を指名することはできない。また最高裁判事の指名に当たって、大統領は政治的に近い立場の人物を選ぼうとする。誰が最高裁判事になるかによって、判決が大きく変わってくるからだ。ブッシュ前大統領は8年間の在任中に指名した最高裁判事は2名に過ぎなかった。クリントン大統領も2名である。戦後、最も多くの最高裁判事を指名したのはアイゼンハワー大統領である。オバマ大統領は在位2年に満たないが、昨年の5月にソニア・ソトマイヨール控訴裁判事を指名し、今年の5月にエレナ・ケーガン・ハーバード大学法律大学院長を最高裁判事に指名している。(つづく)
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