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2010-07-06 10:55

(連載)吉田重信氏の藤原正彦論文批判に同感する(3)

山崎 浩  会社員
 戦前外交の失敗について、僕は、これらの事件を外交的に見ています。あの戦争は、開戦の前に既に外交的に負けていたのです。ハルノートだけを見てもそうです。満州事変以降、アメリカはスチムソン・ドクトリンによって日本の膨張政策を否認して来ました。制裁は見合わせていましたが、日本軍の仏印進駐によって、英蘭とともに禁輸措置に出ました。中国との停戦が実現できず、米英蘭との戦争も避けられないとなった段階で、日本は負けていたのです。敗色が濃くなると、ソ連も参戦して来ました。どう努力して見ても、始めから勝てない戦争でした。米内は、そのことが分かっていたから、早期講和に努力します。

 それが分からない人には、講和努力は裏切り行為に見えたでしょう。田母神さんもそのように言ってましたが、かれらは根本的に狂っています。日本が責められるのは、次の3点です。(1)九カ国条約・不戦条約に調印しておきながら、それを破りました。インドやパキスタンが核実験するのと、北朝鮮が核実験するのとは違います。北朝鮮はNPT条約加盟国であり、核開発はしないと約束して置きながら、その約束を破ったからたたかれるのです。(2)日本は「満州事変は自衛行為で、紛争解決後には本来の駐留地域に撤収する」と言って置きながら、錦州を爆撃し、満州全土を占領し、挙句の果てに満州国を分離・独立させたのです。(3)その後の関東軍の策謀はとどまらず、華北分離工作、蒙古分離工作とすすんでいきました。

 日本は、サンフランシスコ講和条約により、主権を回復し、独立しました。その後は、多くの国に賠償金も支払いました。ソ連とも国交を回復して、国連にも加入できました。OECDにも加盟しました。また1964年には東京オリンピックを開催し、多くの国が参加して、祝福してくれました。当時の日本は、戦後復興により自信に満ち溢れていました。占領政策による「洗脳」で自信を失ったと言うのは真っ赤な嘘です。

 僕が心配するのは、藤原さんのような立場の人が増えると、戦後日本のしてきた賠償外交が否定されることです。B級戦犯として外地で非命に倒れた人も大勢います。日本は多くの犠牲を払って、戦後の地位を築いて来ました。屈辱にも耐えて来ました。これらの努力と信用をいまさら台無しにしてしまって良いものでしょうか?国家も、社会も、個人も、傲慢となり、反省の心を失った時に、滅びます。戦前の日本は、まさにそうでした。今またそれを繰り返して良いものでしょうか?みずからの過去を反省して、過ちを繰り返さないと誓うことと、自分達の歴史に誇りを持つこととは、十分両立すると僕は思います。(おわり)
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