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2006-06-13 15:06

連載投稿(4)いまの靖国神社は、日本の総理大臣が不戦の誓いをするのに不適切な場所です

山崎養世  シンクタンク代表
 これとは別に、日本が歴史を本当に将来への教訓にするためには、戦争の犠牲者をどう弔うのかしっかりした方向を決めるときでもあります。靖国神社に祀られているのは、明治維新以来の戦没兵士だけです。「生きて虜囚の辱めを受けず。」東条英機首相の書いたこの戦陣訓に従って投降せずに投身自殺したサイパン島の若い母親は祀られていません。原爆や空襲で殺された子供たちも祀られていません。殺されたアジアの人たちも祀られていません。しかも、乃木大将や東郷元帥も西郷隆盛大将も祀られていません。戦争犠牲者の一部しか靖国神社は祀らないのです。

 一方で、敵国に逮捕され死刑となったA級戦犯は靖国神社に祀られています。戦争中に総理大臣、陸軍大臣、内務大臣、軍需大臣、参謀総長などを兼任した東条英機氏も祀られています。靖国神社によれば、日本国にも指導者にも戦争責任はないのです。戦争に不可欠な石油と鉄くずのほとんどを輸入していたアメリカと戦って負け、600万人の日本人が殺された責任はないそうです。それでは、兵士と市民とアジアの人々は誰の責任で死んだのでしょうか。靖国神社は宗教法人だからどんな主張をしようと国家から自由だと言います。それでいて、国家の最高指導者の参拝を求めます。矛盾しています。いまの靖国神社は、日本国の総理大臣が不戦の誓いをするのにはまったく不適格な場所です。国益を損なうことなく総理の参拝を求めるならば、『エコノミスト』誌のエモット元編集長が指摘したように、靖国神社を国家管理にして日本政府の歴史認識と整合性のある形にするしかないのでしょうか。それでいいのでしょうか。

 これからの日本には、国家と戦争のために犠牲になったすべての人たちを、わだかまりなく追悼できる新たな施設が必要です。そうでなくては、天皇陛下、総理大臣をはじめとした内外の国民が平和の誓いをする場としては不完全になります。この一歩を踏み出すことが次の政権の課題ではないでしょうか。(おわり)
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