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2010-06-02 00:37

正教会寺院の美しいブルガリア

小沢一彦  大学
 ブカレストからヴィトシャ山脈麓に位置するブルガリアの首都ソフィアまで、大河であるドナウ川やリラの僧院を見下ろしながら、プロペラ機で空路到着。ブルガリアはルーマニアとともに、2007年にEUに参加し、加盟国は27カ国となった。それより前の2004年には、旧東欧・バルト諸国やバルカン・地中海諸国のキプロス、チェコ、エストニア、ラトビア、ハンガリー、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニアがEUに加盟している。ブルガリアは現在人口約790万人で、スラブ系とともにアジア系のブルガール人が多数派を占める。ソフィアの歴史は紀元前7世紀にまで遡り、古代トラキア人が世界最古級の黄金文明を築いていた。

 その後、ギリシア人やマケドニア人が侵入し、紀元46年にはローマ帝国によって征服された。7世紀には、アスパルーフ汗に率いられたアジア系のブルガール人が、この地にブルガリア王国を建設している。10世紀頃よりの古地図にも、ブルガリア帝国は度々登場している。ブルガリア人に聞くと、マケドニアとも言語的には近いらしい。東ローマ(ビザンチン)帝国に支配される中、ギリシアや東方の文明も吸収し高度な文明を築き、キリル文字もブルガリアが発祥の地。ギリシア正教に改宗したボリス1世が、9世紀に聖書のスラブ語訳を進めたことで、東欧全体に広がったのだ。

 1396年にはオスマン・トルコ帝国の進軍により、その後500年にもわたる支配を受けた。やはり、周囲の国ぐにより黒髪で、肌の色も濃い人々が多いのも、もともとアジア系チュルク族の末裔であることと、トルコに隣接していたからであろう。ベルリン協約でドイツ近代化の父・ビスマルクをはじめ、ロシアの南下政策を警戒する西欧に干渉され、1909年にようやく小規模ながらの独立を果たすことができた。冷戦時代には東ドイツ同様、旧ソ連の忠実な同盟国で、トドル・ジフコフが1989年の東欧革命まで、なんと35年間も権力を握っていたのである。共産主義崩壊後は、スペインから帰国したシメオン2世などが政権を担当したが、複数政党制導入後も政権基盤は弱く不安定なままで、真の「民主化」にはほど遠い権威主義的政治体制が継続している。

 それでも、EUがブルガリアの加盟を急いだのには、「改革の芽」を潰してはならないという意図、黒海の資源や対ロシア政策、21世紀に入ってからの約5%の経済成長という成果、低賃金労働者の存在などの理由が挙げられる。他方、ルーマニア同様、貧富の格差が大きく、一般市民の月額賃金は、ルーマニアが平均約200ユーロなのに対し、ブルガリアは170ユーロにとどまっている。そして、いまだにカジノや売春、麻薬、西欧への出稼ぎなど、ルーマニアと似た「マフィア経済」が横行し、政治、司法や農業分野での汚職が問題視されている。EUも(ユーロ圏16カ国だけでも、ここ2年ほどで約22兆円の損失処理を迫られる危険性がある中)、海外からの投資資金の逃避を食い止めるためにも、透明性確保のため補助金削減などの「制裁措置」により、早期に政治腐敗問題の解決をはかるべきだろう。
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