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2010-06-01 07:36

小沢の立ち位置と思惑を分析する

杉浦正章  政治評論家
 世に悪女の深情けほど気色の悪いものは無いが、首相・鳩山由紀夫の姿とダブる。ごうごうたる辞任要求の声に、「国民の命を大事にする政治をしっかりと心に植え込んで頑張る」だそうだ。まるで深情けの悪女が、おんぶお化けになって国民の背中に取りついている姿だ。往生際の悪さは並大抵ではない。しかし、引導を渡すのがこれまた「悪役」の最たる幹事長・小沢一郎では、いかんともしがたい。映画を観る子どものように、「どっちがいい人」か聞きたくなる。その小沢はいま何を考えているのだろうか。

 現在、小沢のやっていることを観察すると、ここ数日腹心を使って参院側の辞任論をあおっている姿が浮き彫りになる。参院側の「退陣要求の声」なるものは、主に筆頭副幹事長・高嶋良充と参院議員会長・輿石東から聞こえてきている。最大の政局マターを、両者の独断で公言できるわけがない。小沢と打ち合わせた上での話しだ。背後には小沢の“世論操作”があるのだ。「改選組の皆さんから悲痛な声」と高嶋らが声を上げているが、組織だった動きがあったわけではない。つまり2人を使って「参院の窮状」を際立たせているのだ。もちろん改選組の置かれた立場はまさに崖っぷちであり、深刻ではあるが、公言されているわけではない。“広報宣伝”はもっぱら高嶋、輿石が受け持っている。

 小沢は何を狙っているのだろうか。狙いの第一は、鳩山の「自発的辞任」であろう。自ら手を下さずに、世論が盛り上がって辞任に持ち込めれば、一番いい決着だ。しかし、これに気づいたとみえて、鳩山は31日、急きょ小沢と輿石を呼びつけ、たった8分間だが会談し、明らかに続投の駄目押しをしたようだ。鳩山は輿石に「状況はそんなに厳しいのか」と聞いたようだが、まるで分かっていない。鳩山の唯一の武器は、「私を辞めさせたら、小沢さんあなたも辞めなければ」であろう。中国首相・温家宝が滞在中であることも、鳩山には一時的にプラスに作用している。小沢は、党に戻って、役員会で今後の対応につき一任を取り付けたが、これは民主党が首相の生殺与奪の権を小沢に与えたことにほかならない。

 小沢の更なる狙いを分析すれば、「小鳩体制」に見切りを付け、自らの温存を図ることが可能かどうかに迷っているに違いない。下手をすれば“抱き合い心中”が待っている。党内には渡部恒三のように、「鳩山君にだけ責任を取らせて、もっと悪いヤツが生き残るなら、状況はもっと悪くなる」と反小沢の動きも噴出しかねない状況があるからだ。いま党内世論や国民世論の「堀の深さ」を測っているところだろう。自らを温存できないと判断すれば、「小鳩体制」継続、温存できれば「鳩山切り」へと動くのだろう。問題は「鳩山切り」をした場合に、日程が可能かどうかも焦点だ。参院選を7月11日投票とした場合、あと40日間で後任人事の選出、首班指名まで行うのは至難の業と言ってよい。

 7月25日投票とすれば余裕が出てくるが、6月16日までの会期を延長すれば、国会は何が出てくるか分からない状況だ。国会の混乱を覚悟で参院選を先延ばししてみても、得るものは少ない。第一、鳩山が「会期延長せず」の方針を表明している。鳩山は参院選への逃げ込みをはかるのが延命だと思っているに違いない。先に挙げた4つのシュミレーションのうち、「小沢だけ辞任」のケースはまずなくなり、(1)鳩山辞任、(2)鳩山・小沢辞任、(3)鳩山・小沢体制継続、の3つが残った状況だろう。内閣支持率は落ちるところまで落ちて、さらに“底値”をうかがっている状況だ。国民にしてみれば、いまや“政治のがん”と化した「小鳩体制」を民主党が除去して、再スタートを切ることが最良だが、一寸先は闇の状況が続く。
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