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2010-05-30 03:05

(連載)「日米円卓会議」に参加した所感(3)

河村 洋  親米NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 以上の観点から、今回の「日米円卓会議」については、つぎのような議論もあればよかったと願わずにはいられなかった。まず、日本から見てヨーロッパはそれほど遠いのだろうか?アメリカの同盟国として日本と最も利害と理念を共有しているのは、ヨーロッパ諸国である。実際に、かつてのG5から現在のG8まで、日本とヨーロッパはパックス・アメリカーナを支える世界の共同経営者である。明治維新以来、日本には西洋列強の一員として国際政治を渡り歩いてきた歴史的な経緯もある。

日本側には、もう一押し二押しで私の考えていることを議論してくれたと思えるパネリストもいた。円卓会議の共同議長を務めた伊藤憲一日本国際フォーラム理事長は、日米同盟のグローバル化を説いた。世界規模で活動する日米同盟となると、やはり日米欧先進民主国家同盟まで考える必要があると思われる。国家基本問題研究所の櫻井よし子所長は、自由の価値観の重要性を強調した。ただ、櫻井氏の視点はアジアに偏りがちな印象を受けてしまった。両パネリストの発言を聴いているうちに、私は野球場の外野席でホームラン・ボールを待つファンのような気持ちになった。「さあ、自分の場所に飛んできたぞ!」と思った大飛球は、二度ともフェンス前で失速して、外野手に捕球されてしまった。私に発言機会があれば問題提起してみたかったと、期待が高まっていただけに、非常に惜しく残念であった。

 アメリカ側のパネリストからも、アメリカの東アジア・対日政策に貴重な示唆を与えてくれる発言が相次いだ。だがより多様な出席者が議論に参加していれば、もっとアメリカの本音に迫れたのではないかと思われる。日米関係というと日本・東アジアの専門家との対話に偏りがちな傾向がある。しかし、政治的に見れば、日本は明治以来「欧米先進国の一員」であったのであり、ヨーロッパなどの他地域からも専門家を招いてもよかったのではないかと思われる。そうすれば、これまでにない日本ファンの獲得にもつながり、アメリカ側の参加者が盛んに述べていた「日米対話の深化」にもつながったのではなかろうか?

 また、日本側が与野党の関係者を招いていたので、アメリカ側にもオバマ政権の外交方針に批判的なパネリストを招いてもよかったと思われる。先の大統領選挙で共和党の候補であったジョン・マケイン上院議員は、選挙期間中にロバート・ケーガン氏らネオコンの論客が主張する「民主国家連盟」の構想を採り入れた論文を『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載していた。結論として、日米欧同盟の再強化により民主国家の団結を強め、専制国家に対抗する、新しい国際理念を提唱したい。それこそが、この「日米円卓会議」で議論された日米同盟の深化と再定義につながるものと信ずる。(おわり)
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