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2010-05-24 07:18

首相だけでなく、人間も失格の鳩山は、即刻退陣せよ

杉浦 正章  政治評論家
 辺野古回帰を5月23日に明言して、本人は辞める気はさらさらない。戦後史に残る大食言をして、首相・鳩山由紀夫は何ら意に介せず、前日には狡猾にも「辛抱強くお支えいただき、参院選を乗り越え、国民の声が届く政治を作りたい」と、政権継続の予防線を張っている。ここまで来ると、もはや首相としてのあり方を語るより、人間像を語る方がよい。誠実に人生を生きているか、恥を恥と感ずるか、自分の存在が他人に迷惑となっていないかと気づかうか、信念を持っているかなどは、人間としての基本だ。しかし、鳩山首相はすべての点について「ネガティブ」であり、そのような人間としての基本が欠落している。首相は自らの非を認め、参院選で鉄ついが下る前に、辞任の道を選ぶべきだ。

 なぜ国民の怒りが噴出しているかを分析してみよう。辺野古移転問題は歴代政権が13年がかりで作り上げたガラス細工であり、それをまず「最低でも県外」発言で鳩山はたたき壊したのだ。国民は当初首相のやることなら、なにか決着方法を考えてのことだろうと受け取った。「あの辺野古の海が埋め立てられる現行案が実現するなどという話は、決してあってはならない」と美文調の発言に酔った国民もいただろう。「職を賭す」といえば、「それほど考えていてくれるのか」と沖縄県民は熱いものがこみ上げたかもしれない。そして「腹案がある」と言明して、5月末決着を約束したのである。海千山千の政界、官界、言論界も、「出来っこない」とは思いつつも、ひょっとしたらウルトラCが飛び出すかも知れないと見ていたに違いない。

 それが、沖縄県知事・仲井眞弘多に対して「できるかぎり県外ということばを守れなかったことを、心からおわび申し上げたい」と、普天間の辺野古移設を明言したのだ。自民党政権の合意をまさに踏襲したのだ。迷走に迷走を重ね、誤判断の上に誤判断を重ねる過去の発言の経緯を踏まえれば、首相が「断腸の思いで下した結論だ」と述べたのを、「本当だ」と思う国民がいるだろうか。むしろ「毎度のことだ」と思うに違いない。「昨今の朝鮮半島の情勢からも、東アジアの不確実性がかなり残っており、海兵隊を含む在日米軍全体の抑止力を低下させてはならない」とも述べたが、「最低でも県外」で誰もが沖縄海兵隊の抑止力低下は分かっていたのだ。知らぬのは本人だけだったことになる。

 中高生に「ハトる」という言葉が流行りだしたという。「出来もしないことを約束すること」だそうだ。国民の範たるべき首相が、致命的な誤判断を繰り返し、侮べつの対象にまで落ちている。本人は、何とか焦点をそらそうと必死だ。その思い余ってか、朝鮮半島の緊迫に際して「日本が先頭を切って走る」とまで発言した。一触即発の事態も予想される中で、先頭を切れるのか。自らの発言で北の潜水艦が日本の民間船舶を攻撃したら、責任をもてるのか。危機管理意識などさらさら無い。要するに、首相の座にあってはならない人物が首相の座についてしまったということだ。だまされた選挙民に第一義的な責任があるが、ここにきたら鳩山は、いまこそ恥を知って、辞任すべきではないか。普天間移転を日米合意しても、当座しのぎに過ぎない。明々白々な偽装決着に他ならない。「強行しようとすれば、辺野古は火の海になる」と外交評論家・岡本行夫が形容している通りだ。小政党・社民党が政権を離脱しようがしまいが、現地の反対運動で事実上移転は不可能だ。予見しうる将来にわたって、普天間の移転は困難となった。全国から活動家が集まってしまう。もはや現政権では普天間問題の解決は出来ない。

 地に落ちた首相の支持率も、もう後がない段階にまで落ち続けるだろう。やはり国民ひんしゅくの象徴である幹事長・小沢一郎と語らって、参院選に現体制で臨んでも、完膚無きまでにたたきのめされるだけだ。冒頭に書いた「辛抱強くお支えいただきたい」という鳩山の発言に、国民が応ずることは絶対にない。「国民の声が届く政治」は他の政治家に任せるべきだ。自らの辞任が、民主党のためであるだけでなく、国家・国民のためであることに、早く気づくべきだ。そうでなければ、「喪失の鳩山時代」が長引くだけだ。民主党中堅若手も、308議席の温もりに浸っていないで、いい加減に声を上げるべきではないか。放置すれば、やがては自らに災いすると認識すべきだ。
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