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2010-05-22 02:36

(連載)世界的投機資金の跳梁を規制せよ(2)

宮崎 厚  ベンチャー企業顧問
 世界の財政赤字の発端の第二の原因は、過度の社会保障や過度の福祉国家、はたまた過度の公務員優遇の要求に政府が応えてしまうことです。この場合「過度」とは、税収以上にばらまくことにほかなりません。もともと民主政治とは、「納税者」が主体で政府の財政活動をコントロールすべきところを、「市民」も勘違いして、政府に自分たちの要求を突き付け、政治家もその要求どおり動けば当選できるということで、悪循環が起こっています。もともと社会保障や福祉とは、市民活動の中で相互に助け合い、あるいは協力するのが本来の姿であり、政府による所得の再配分は禁じ手のはずです。政府の所得再配分は、金融投機と並び、付加価値を生まない二大悪で、拡大すればするほど実体経済を圧迫して、社会を行き詰まらせるものです。

 第三に指摘したいことは、どんなに一時的に財政赤字があろうとも、減税政策こそが真の打開策だということです。重税社会では、消費需要も盛り上がらず、ケインズ経済学でいう「消費は美徳」を実践できなくなります。産業も疲弊し、人々が自立して、自らの職業を通じて、自分の人生や家計を賄う生産活動を疎外します。企業の拡大再生産活動にも、マイナス効果となります。あるべき理念は、所得の平準化ではなく、全体の富の拡大です。貧困層の自立を促し、その所得を引き上げることです。

 重税は、民主政治を否定するようなもので、社会に閉そく感を蔓延させ、封建時代や絶対主義時代に戻るようなものです。世界の貧困をなくすための先進諸国の公的援助にしても、産業資本を提供したり、相手国の人々の自立を促す方策こそが、本来採るべき援助であって、寄付や救済活動は、民間同士で行うべきものであります。ということで、G20諸国など各国の公的援助の具体的内容は、以上のような理念を踏まえ、実物経済そのものを持続的に発展させることを目標にすべきです。日本は、この面で世界をリードするノウハウを十分に持っていると思います。

 もうひとつ、世界中の人々の生活水準が向上すれば、テロリストの温床のような地域もなくなり、世界の人口爆発も収まり、地球環境の維持にもマイナスではないと思います。政府の役割は限られたものですが、であればこそ、各国政府は互いに政策協調して、その外交を進めてほしいものです。少なくとも国内で所得再配分政策をやるよりは、重要だと思います。(おわり)
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