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2010-05-11 07:33

谷亮子擁立で「臭いものにふた」を狙う小沢選挙戦略

杉浦 正章  政治評論家
 「さすがに小沢一郎はすごい球を投げる」と褒めてあげたいが、そうはいかない。「相変わらずのポピュリズム選挙の邪心が出た」と言いたい。柔道家・谷亮子の擁立は、小沢がいかに自らの「政治とカネ」問題から国民の目をそらすかの苦肉の策でしかない。小沢辞任を求める声が国民の8割を超える中で、人気スポーツ選手を活用しようとしても、それは焼け石に水でしかあるまい。自ら選択した道であるにせよ、政治に翻弄されるであろう一途で純真なる谷がふびんに見えてくる。

 テレビ朝日の世論調査では、ついに政党支持率が逆転した。自民党28・7%にたいして民主党24・4%となったのだ。この一事を見ても、民主党が逆風にさらされていることが分かる。参院議員会長・輿石東が「逆風といわれるが、タコは逆風の時の方が高く揚がる」と強がっている。これは引かれ者の小唄の部類であり、もう高く揚がることはない。民主党は前回参院選挙で「消えた年金」の追い風を受け、比例代表で過去最高の2300万票を獲得し、20議席を達成した。しかし、追い風は昨年の衆院選までで完全に止まった。小沢が谷擁立で「百万、千万の味方を得たような気持ち」と言いたくなるわけである。

 小沢は「新聞、テレビの調査をうのみにして、選挙をやるつもりはない」と突っぱねているが、最近の調査と、これを選挙情勢分析に反映させるノウハウには、格段の進歩が見られる。当たるのである。恐らく民主党の秘密裏の調査でも、相当ひどい数字が出ているはずだ。それもそうだ、カラスの鳴かない日はあっても、民放テレビのワイドショーで普天間問題と「政治とカネ」が取り上げられない日はない。これを切り返すには、どうすればいいか。自分と首相・鳩山由紀夫が辞任すれば一番手っ取り早いが、それだけは死んでも嫌だ。となると、かねてから親交のある人気スポーツ選手を“乗せる”しかない。よほど小沢は“口説き”がうまいに違いない。ころころと乗ってきて、“小沢ガールズ”が出来上がるのである。

 小沢は「谷を担ぎ出せば、ワイドショーは公示日まで谷一色となる」と踏んだのであろう。確かに軽佻(けいちょう)浮薄な民放テレビは、谷をいかに引き出すかで競争するに違いない。小沢は、普天間と「政治とカネ」一色のワイドショーを、谷人気で削り取れると踏んだのだろう。谷は、その人柄のよさを小沢に“活用”されることになる。しかし、小沢も恐らく気がついているだろうが、比例区の強敵は自民党ではない。みんなの党だ。みんなの党は、昨年の衆院選で政党支持率はわずか1.9%だったが、比例得票率は4.27%で、3議席を獲得している。その後みんなの党の支持率は、現在多くの調査で民主、自民に次ぐ3位に浮上している。このままいけば、今回比例区で躍進するのはみんなの党と踏んでいるに違いない。小沢としては「何としてでも比例区の相対的凋落を(ちょうらく)を防ぎたい」と打った手が、谷擁立だ。

 谷が柔道家、ママ、政治家の「3足のわらじ」を履くことが出来るかは、疑問がある。本人がそれを可能と見ているとしたら、議員活動の多忙さと厳しさを甘く見ていることになる。それとも小沢の“甘言”に乗せられているのかも知れない。どうも小沢のPR効果狙いが背後にある気がするが、谷はどろどろした政治の世界に巻き込まれてしまったことは間違いない。昨年の「ばらまきマニフェスト」に次ぐ、民主党のポピュリズム路線が、今回も鮮明になった。他党も有名人に頼る傾向は強いが、民主党の場合は邪悪なるものをカバーアップするという“邪心”が垣間見られ、動機がより不純である。問題は民度であろう。臭いものに谷擁立でふたをする小沢のやり口に、再びだまされるほど有権者は甘くないと見たい。
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