国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2006-06-09 17:44

連載投稿(1)靖国参拝を続けることは国際的な孤立を招くだけ

山崎養世  シンクタンク代表
 久しくみられなかったことですが、外交、端的にいえば靖国参拝が、次の総理を決める重要ポイントになりつつあります。そして、日本は中韓両国に外交的に敗北しつつあります。残念なことです。小泉首相がいまのようなかたちで靖国参拝を続けることは、国際的な孤立を招くだけです。靖国神社の展示施設では、日中戦争や太平洋戦争は日本の防衛戦争であり、日本に戦争責任はなく、東京裁判は受け入れられない、と主張しています。小泉首相はこの重大な主張についての賛否を明らかにせず、心の問題として参拝を継続してきました。

 もちろん、戦争で死んだ兵士を国家が弔うのは当然です。また、勝者であるアメリカやその連合国が戦争の悪から無罪であるわけはありません。アメリカによる原爆投下や全国の大空襲は無抵抗の市民の虐殺でした。また、1840~42年のアヘン戦争で本格化したヨーロッパのアジア侵略が日中戦争の遠因であることも間違いないでしょう。マッカーサーは、神でない人間が行った東京裁判には必ずどこかに誤りがあるだろうと認めたうえで、戦争のない世界を作るためにこの裁判が必要だとしました。私の高校の先輩である広田弘毅元首相は、誤判の疑いが強い死刑を黙って受け入れました。南京事件の死者を弔う興亜観音を太平洋戦争前に建立した松井石根大将も従容と死に就きました。(刑死した7人のA級戦犯の遺骨は関係者の決死の努力で興亜観音に祀られ、吉田茂が碑を建てました。)

 戦後の日本は、国家として東京裁判を受け入れて、アメリカを中心とした自由主義陣営に参加しました。アメリカと戦ってまで守ろうとした国外の領土を全て奪われた日本が、世界第二位の経済大国になりました。世界が尊い犠牲を払って得た国連中心の平和体制の受益者になりました。その日本の首相が、東京裁判は無効だという靖国神社の主張に反対でなければ、日本は民主国家ではない、軍事大国化を目指している、といったあらぬ非難を認めるようなものです。そして、東京裁判を主導したアメリカとの対立に行きつきます。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム