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2010-04-23 20:20

鳩山首相の核安保サミットにおける迷走

河村 洋  親米NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 去る4月14日に日本国際フォーラムの主催で、拓殖大学の遠藤浩一大学院教授を報告者に招いた「民主党の政治をどう見るか?」というパネル・ディスカッションが開かれた。遠藤教授は、現在の民主党政権を3つの観点から分析し、最後に来る参議院選挙の展望を述べた。まず昨年の政権交代については、「2005年9月の郵政民営化選挙で自民党を支持した無党派層の票が、民主党に流れたことが、原因だ」と遠藤氏は述べた。ただ、「自民党優位体制が揺らぎだしたのは、2003年に日本で初めてのマニフェスト選挙が行なわれてからだ。この選挙から民主党が直実に票を伸ばすようになったが、それは日本において左翼・リベラル勢力が伸張したためではなく、保守・中道層が自民党の一党支配に見切りをつけたからである」と言う。

 こうして誕生した民主党政権について、遠藤氏は「閣内での政策理念の対立が著しいばかりか、党務を取り仕切る小沢一郎幹事長が鳩山内閣を支配している」と指摘する。「この状態は、旧ソ連や中国で共産党が政府に対して優位にある有様にそっくりだ」と言う。遠藤氏は、混乱した民主党と終焉を迎えた自民党に代わる諸新党による政界再編への期待を述べている。その民主党政権の混乱を顕著に示すのが、安全保障で現在の最大懸案事項となってしまった普天間基地移設問題である。遠藤氏に限らず、日本国内では「鳩山首相は、公約通りに5月末までの問題解決をなし得なければ、辞任すべきだ」という声が根強い。そうした事情からか、4月12日から13日にワシントンで開催された核セキュリティー・サミットでは鳩山首相は、オバマ大統領と10分間の非公式会談で普天間問題の打開をはかった。

 しかし、多国間交渉の場で議題を外れた問題を持ち出したのは、おそらく鳩山首相だけではなかろうか?このことだけでも、いかに現政権の安全保障政策が迷走しているかがわかる。47ヶ国の首脳が集まった核セキュリティー・サミットでは、沖縄の米軍基地問題など「国内問題」に過ぎない。就任してからというもの医療保険法案の議会通過をはじめとする内政問題にかかりきりで、今回やっと核問題に取り組み始めたオバマ大統領と普天間基地問題の交渉をしようにも、大統領自身は普天間に関して充分な予習をしていない時期である。鳩山首相の行為は、英語の試験の前に数学の話題を持ち出す、理科の試験の前に歴史の話題を持ち出すようなものである。

 ある外交官が述べていたように、普天間問題の解決が長引けば、在日米軍は現状維持で普天間基地を使用し続けるだけである。アメリカはほとんど困ることはない。この会議では「核なき世界」を目指す長期目標が提唱されたが、緊急の問題はイランの核武装問題であった。オバマ大統領が中国の胡錦濤国家主席と最も長く会談したのも、イランの制裁をめぐって欧米と中国の溝が埋まらないためである。この点は、本欄への以前の私の投稿記事でも論じた通りである。多くのメディアは中国に比べて日本の存在感が低下したと報道していたが、それもこれも鳩山首相が会議の議題でない問題を持ち出すのだから、仕方がない。
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