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2006-06-05 09:22

戦争を野放しにすることだけは絶対に反対

上野 忠  大学教授
 さる5月11日に伊藤憲一氏の「近代の破綻と非ヨーロッパ文明の再発見」について感想を投稿させていただきました上野忠です。国際政治学を広い文明史観のなかで論じておられる伊藤氏のアプローチに共感を感じていますが、「戦争史の観点から見た現代」についても同様の感想をもちましたので、一筆いたします。

 日本人の戦争観として、2つのポスターの話が紹介されているのは、面白いと思いました。「海外で戦争をする国にはさせません」というある政党のポスターの戦争観と「この町は犯罪を許しません」というある町の自警団のポスターの犯罪観(戦争観)を比較しているのが秀逸だと思いました。

 戦争直後の日本ではスイスの永世中立主義が人類の理想であるかのように喧伝されたものですが、いまではナチス・ドイツと英米仏等連合国を同等に扱ったスイスの中立主義を胡散臭いものと見る批判的な見解が欧米の思潮の主流です。やはり第二次大戦後侵略戦争に対して中立というのはあり得ないんだという国連の考え方のほうが一般化してきているせいだと思います。 

 侵略戦争の認定が各国の自主的判断に任せられていたのが1928年の不戦条約で、それがこの条約の実効性を著しく損ねていたと思いますが、1945年の国連憲章ではその認定が国連安保理に委ねられています。それは進歩ですが、常任理事国が1国でも反対すると認定できないのは、やはり重大な欠点です。そこで米国はその場合には有志連合を組織してでも侵略を阻止するとして、それでサダム・フセインのイラクに攻め込みました。

 この有志連合の武力行使をどう見るかで、世界は二分されていますが、その判断をするうえでは、伊藤氏の指摘するように、戦争観の歴史的進化を踏まえて判断することが重要だと思います。戦争に訴えることを国家の主権的自由に属する行為であるとして野放しにした時代に戻ることだけは、絶対に許すべきではありません。
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