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2010-04-03 22:42

この17歳の少女を「けだもの」だと切り捨てることは許されるか

加納 俊夫  大学教員
 モスクワの地下鉄爆破事件の第一報を聞いたときは、「これがテロリストたちのやることなら、ひどいことをするものだ」と素直に思ったし、犠牲となったモスクワ市民に心から哀悼の気持ちももった。しかし、その後メドヴェージェフ大統領が犯人たちを「かれらはけだものだ!」と表現したという話を聞いたときは、「そうだ、そのとおりだ」と思うより先に、「どんなひとたちが、こんなひどいことを計画し、実行したのか?そして、それはなぜか」と、私の関心は、むしろ具体的な犯人像に向かった。

 そこへ、その回答が飛び込んできた。さる4月2日、ロシアの国家テロ対策委員会が「モスクワの地下鉄連続爆発テロの自爆犯の1人を特定した」と発表したからである。ロシアの国家テロ対策委員会によると「特定されたのは、パルククリトゥールイ駅で起きた2回目のテロの実行犯で、DNA検査などの結果、ロシア南部・北カフカス地方のダゲスタンに住む、1992年生まれの17歳の少女だった」という。

 2日付けのロシア紙『コメルサント』によれば、「少女はダゲスタンで治安当局に殺害されたイスラム武装勢力のメンバーの妻で、夫を殺害された報復の可能性がある」という。もう1人の自爆犯の身元はまだ特定されておらず、当局が捜査を続けているという。17歳といえば、まだいたいけない少女である。彼女をして、ここまでの行動に走らせるものはなになのか。その問いを無視して、彼女の行動だけを捉えて、「けだもの」と決めつけることに、私はいま違和感を感じている。

 ロシア人は帝政時代にチェチェン人の祖先伝来の土地を武力で植民地化し、スターリン時代にかれらを根こそぎシベリアや中央アジアに放逐し、エリツィン・プーチン時代に「独立したい」というかれらの願いを武力で押しつぶした。たとえば、朝鮮半島を植民地化した日本人が、21世紀のいまになっても、まだ「朝鮮は日本のものだ」といって、同じようなことをすれば、朝鮮半島のひとたちが東京でテロをやるかもしれない。それをわれわれは「けだものだ」ということは、できるのだろうか。
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