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2010-03-25 07:45

予算成立で政権は寸前暗黒の「5月危機」へ

杉浦 正章  政治評論家
 かって大新聞の社説で予算の成立を「政府案通り成立に至ったのは遺憾である」(読売新聞)と断じたことがあっただろうか。象徴するものは予算の成立が政権浮揚効果に極めて乏しいことであろう。浮揚どころか待っているのは、生方問題に象徴される「政治とカネ」でのマグマの噴出と、予想される「普天間失政」、破たん状態の財政無策の三重苦である。いずれも出口が見えない。流れはナイヤガラ瀑布のように7月の参院選を控えた「政権5月危機」へ向けて、そのスピードを加速させるだろう。政権にとって一寸先は闇の状況が続く。「おっ」と思ったのは、普天間問題での民主党幹事長・小沢一郎の発言。事もなげに「首相も県外移設、約束した感じ」と言い切った。明らかに鳩山への「脅し」と受け取れる。「生方解任撤回」をめぐって生じた小鳩の確執が継続しているのであろう。

 普天間問題のすべては、鳩山の「最低でも県外」発言にあると言っても過言ではない。この発言が沖縄に過度の期待を生じさせ、あらゆる可能性の芽を摘んでしまったのだ。政府部内での有力案である普天間陸上・ホワイトビーチ両案または両案折衷案と訓練や部隊の一部の移転先として鹿児島県の徳之島に移す案は、県と地元自治体の反対決議にまず直面。肝心の米国もまるで「反米鳩山政権」(ワシントンポスト紙)の窮地追い込みを意図するかのように、現行案に固執している。鳩山は他に表現が思いつかないからあえて使うが、「ノーテンキ」にもまだ「県外あきらめぬ」と口にする。自ら作った「業」の報いを自分で受けつつある情勢だ。はっきり言って5月までに県民、米国、世論が納得する案を作って提示することは不可能ではないか。唯一の方法は「現行案」に帰着して政権を投げ出し、責任を取るしかないのではないか。

 「メリハリついた予算」と鳩山が自賛する予算に関連して言えば、目玉の子ども手当、高校無償化、農家への個別所得補償の本質は参院選向けのばらまきである。なぜなら恒久財源のめどが立っていないからである。山ほどある欠陥を羅列するスペースはないが、野村證券の数字によると子ども手当がGDP0.2%引き上げるが、公共事業削減が0.3%のマイナスで、差し引き0.1%のマイナスだ。過去最大の92兆予算に対して税収が37兆、借金が44.3兆と途方もないばらまき水膨れ予算だ。赤字国債発行は「発散段階」という元財務相・与謝野馨の警告はもっともだ。鳩山はたった7000億しか捻出(ねんしゅつ)できなかった事業仕分けを、懲りずにやるという。それも一年生の美人議員を動員するというが、良識ある国民はもうジェスチャーゲーム、劇場型大衆迎合政治にうんざりしているのが分かっていない。行政刷新担当・枝野幸男自身が過度の期待を戒めているように、大芝居を打っても政権浮揚にはつながらない。

 「政治とカネ」は「ほおかむり3兄弟」の言うことが全く同じだ。「秘書が秘書が」と小鳩が口をそろえれば、小林千代美は「北教組がやって存じ上げない」だ。「存じ上げない」と鳩山の口癖まで真似る低劣さだ。自民党でもやった証人喚問や参考人招致には応じず、説明責任を求める声は80%、小沢辞任を求める声は70%に達している。おりから自衛隊の連隊長が政権の日米同盟の取り組みを「信頼してくれなどという言葉だけでは維持できない」と鳩山を批判。これに中隊長が「連隊長発言は全くおかしくない」と防衛副大臣にメールを送るなど、政治不信に根ざした勇気ある言動も目立ち始めた。自衛隊幹部の政権批判は極めて珍しい。

 霞が関官僚の間の「人を人とも思わない政治主導」批判もマグマがたまりにたまっていると言われる。要するに官僚も不満がうっ積し、表だって発言しなければ面従腹背型になっているのだろう。鳩山政権はツートップが責任を果たさず、小沢流選挙テクニックだけで参院選を戦えると思っているのだろうか。加えて亀井静香の郵政法案での独走と閣内対立、国家公安委員長・中井洽の女性スキャンダル。政権はまさに焼が回ってきたとしか言いようがない。こうした政権の“おごり”の根源は、新聞は販売対策上絶対に書かないが、総選挙で雪崩を打って民主党に投票した有権者の誤判断にあることは間違いない。熱病のような衆愚政治のツケが回ってきているのである。
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