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2010-03-23 09:41

(連載)急速に支持を失うオバマ大統領(1)

中岡  望  ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
 昨年の1月20日はアメリカの歴史にとって記念すべき日であった。議会のテラスに準備された大統領就任式で、オバマ大統領はリンカーン大統領が持っていた聖書を使って、宣誓を行った。多くのアメリカ国民は、オバマ大統領が選挙で訴えた「変化」と「希望」がまさに実現しつつあると感じた。オバマ大統領は就任演説の中で「経済の置かれている状況に対処するために、迅速かつ大胆な行動が必要である。私たちは新たな雇用を創出するだけでなく、成長に向けた新しい基礎を置くために行動する」と訴えた。就任翌日に行われた世論調査では、大統領支持率は65%、不支持率は30%であった。だが7月24日に支持率は初めて50%を割り込み、就任1年後の2月21日の調査では支持率47%、不支持率52%と、世論は就任時と大きく変わってしまっていた。支持率は1年間で約20ポイント下落したのである。(調査はラスムーセン社)。

 昨年11月に行われたニュージャージー州とバージニア州の知事選挙では、民主党候補はいずれも共和党候補に敗北を喫した。さらに今年1月19日に行われたマサチューセッツ州の上院補欠選挙でも、民主党候補が共和党候補に大差で敗北している。同補欠選挙の出口調査での支持率は、共和党候補が61%であるのに対して、民主党候補の支持率は30%と半分以下であった。補欠選挙はケネディ上院議員の死去に伴うもので、誰もが民主党候補の勝利を予想していた。しかも大統領選挙でオバマ候補が78%の票を獲得した州である。マサチューセッツ州の選挙結果は、オバマ政権に衝撃を与えた。

 この1年、いったいオバマ政権に何が起こったのだろうか。アメリカ国民は、ルーズベルト大統領のニューディール政策に匹敵する大胆な経済政策で経済が復興することを願い、ブッシュ政権のもとで傷ついた国際的な関係の修復と威信の回復を期待した。だが1年経った今も、深刻な経済情勢は変わらず、外交政策でもかつての指導力を回復できないまま、アメリカの力の衰退を否応なしに受け入れざるを得ない状況を目の当たりにしている。

 『ワシントン・ポスト』紙のエリ・サスロー記者は、オバマ大統領の次のようなエピソードを紹介している(10年2月3日付け)。オバマ大統領はクリントン元大統領とブッシュ前大統領をホワイトハウスに招き、ハイチに対する支援を国民に求めた。その時、ブッシュ大統領は率直かつ簡潔な言葉で「皆で支援金を送ろう」と訴えた。クリントン元大統領は涙が流れ出すのを抑えながら、「地震で死んだ人々と食事を一緒にしたことがある」と語った。それに対してオバマ大統領は「準備された文章をただビジネス的に読み上げただけであった」と同記者は書いている。大統領選挙の時に見られたような情熱に溢れた雄弁さはまったく感じられなかった。(つづく)
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