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2010-03-11 07:42

民主・公明「野合」のメカニズム

杉浦 正章  政治評論家
 政党間の離合集散は毎度のことだが、余りに節操がないものを“野合”という。いわば「野合専門家」とも言うべき民主党幹事長・小沢一郎と、これに秋波を送る公明党代表・山口那津男の大接近が著しい。自ら衆院の代表質問で口を極めて攻撃の対象とした「子ども手当」、で山口は、賛成に転じたのだ。火を見るより明らかな山口の狙いは、参院選後の政権参画である。政策上の接近を積み重ね、連立にこぎ着ける。この戦略に転じたのだ。一度経験した政権の蜜の味は、魔性のごとく公明党を虜にしているのだ。理念やクリーン政党としてのイメージなど、もはやどこ吹く風の「野合」のメカニズムである。

 接近どころか、お先棒まで担ぎ始めた。公明党国対委員長・漆原良夫は、焦点の「子ども手当」と高校無償化法案、政治資金制度改正問題などで、自ら積極提案して、合意を形成し始めたのだ。修正などはメンツのための口実で、始めに賛成ありきである。「子ども手当」の場合、山口は何と衆院本会議代表質問で、その財源があやふやなことを指摘して、「子どもたちの将来背負う借金の先食いでしかない」とまで言い切って反対したのである。その舌の根も乾かぬうちに賛成とは、本当に恐れ入る。「政治とカネ」で本末転倒が指摘されている政治資金での与野党機関設置も、公明党が率先して実現に動いている。まさに山口の「政治とカネ」の追及は、単なるきれい事であり、本音は政権参画にあったのだ。“クリーン政党”を標ぼうしながら、“ダーティー政党”を支援する構図だ。永田町で「日本の政治を一番悪くしているのは公明党だ」という見方があるのが、実にもっともらしくなってきた。

 背景には、紛れもなく小沢の策略がある。小沢は公明党常任顧問に就任した市川雄一との「一・一ライン」を復活させ、2月26日には創価学会前会長の秋谷栄之助と会談、着々と参院選への布石を打ってきている。大きく見れば、当面は「政治とカネ」で孤立化した民主党を、公明党の抱き込みによって、逆に自民党を孤立化させる意図があるのだ。公明党がまんまと乗ったことで、これは達成されつつある。中期的にはできれば参院選挙での協力を得たいのだろう。それが困難な場合は、普天間問題で社民党を切り捨てざるを得なくなることを背景に、参院選後の公明党との連立で、安定政権を目指そうという戦略だ。この小沢戦略の手の上で、国対委員長・山岡賢次はもちろんのこと、山口も漆原も踊っているに過ぎない。W・ チャーチルは「ヒトラーを倒すためなら悪魔とでも手を組む」と述べたが、「政権獲得のためには悪魔とでも手を組む」のが、近来の日本のポリティックスだ。自社連立はその際たるものだし、自公連立もその範疇に入る。

 10年前公明党と手を組んだ結果、自民党の衰退が目に見えるように進んだ。もはや麻薬のように公明票なくしては生きていけない政党と化したのだ。政権に食い込む、そして自らの背後にある創価学会の諸問題を打ち消す。これが公明党最大の狙いだ。今度はどちらが「悪魔」かといえば、悪魔同志の野合かも知れない。小沢・市河・山口と役者はそろった。それにしても自民党谷垣執行部の無能さは、ここにも現れている。公明党の自民党離れに、なすすべを知らないのだ。自民党と義理人情で結ばれていた前代表・大田誠一が落選して、参院選候補にもなれぬまま、山口に完全に干されたことも作用しているのだろう。公明党対策は、小沢にじゅうりんされて、なすがままだ。このままでは山口の言う「自民党との参院選協力は白紙」のまま選挙戦となっても、おかしくない。公明党は比例区での自民党票に依存するところが大きいが、これを逆手にとるくらいの大技をつかえる政治家が自民党にはいない。
 
 
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