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2010-03-08 17:27

(連載)インフレ目標設定にこだわるな(1)

角田 勝彦  団体役員
 最近、長引くデフレを経済沈滞の原因だとして「インフレ目標設定など、デフレ克服にまず力を注げ」との議論が、政府首脳発言を含んで、活発化している。これは「雇用と経済の現状から見て、日銀(金融)にも、もう一肌脱いでほしい」との政府(財政)からの要請ととれば、納得できるものはある。我が国の場合、出口戦略はまだ早い。しかし、インフレ目標設定には神学論的是非の論争があるほか、目標実現に問題が多い。こだわっていると、肝心の雇用と経済の改善に支障を来すおそれすらある。昨年末に閣議決定された新成長戦略の具体策も、20年までの「成長戦略実行計画」(工程表)とともに、6月までに策定される予定であったが、進んでいない。

 他方、日銀も、政府の要請を踏まえ4月に向けて追加金融緩和を検討し始めたようである。なお予算は、良識ある(?)国会審議の結果、危惧された遅延無く年度内に成立することになっている。政府は、この際インフレ目標設定にこだわらず、実質経済成長を目指す具体策などの策定と実施に全力を注ぐべきであろう。その際、望むべくは、民主党内や官僚機構はもちろん、経済界や出来れば野党なども含め、衆知を集めるべきである。

 2月16日に菅財務相が衆院予算委員会で、「1%程度を政策的な(インフレ)目標にすべき」と表明し、22日に鳩山首相も同委員会で、「デフレ脱却を日銀に期待する」旨表明してから、デフレ克服が新たな成長への突破口であるかのような期待が高まっている。すなわち日銀が、たとえば1%程度の物価上昇率を目標に定め、その実現に向けて金融政策を運営する手法を採択することが求められているのである。日銀は、実質的金融緩和はともかく、「デフレの根本原因は需要不足」(白川総裁)として「金融政策だけでは克服できない」と主張し、日銀が責任を負わされる「目標」設定に否定的なようである。

 幸い景気が2番底に陥る危険は薄らいだが、今春卒業予定の高校生の就職内定率が74.8%、大学生が73.1%(昨年12月現在)となったことが示すように、雇用と経済の先行きは楽観を許さない。事実、2月内閣府の上場企業アンケートによれば、今年度の実質成長率見通しは0.4%で政府見通しの1.4%を大きく下回っている。2010年度から5年間の平均成長率も1.3%で「20年度までの年平均で実質2%(名目3%)の成長を目指す」政府の目標に届いていない。デフレも長期化するとの見方が根強く、物価変動の影響を加えた名目成長率で見ると、10年度の予測値は0.1%減と3年連続のマイナスを見込んでいる。所得の地域格差も続いている。(つづく)
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