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2010-02-26 07:35

自民執行部、方向音痴の迷走

杉浦 正章  政治評論家
 自民党の“春眠”が3日で終わった。完敗の国会戦術である。「一言で言えば、野党慣れしていない」と民主党参院議員会長・輿石東あたりから言われては、どうしようもない。自民党総裁・谷垣禎一は「残念無念。憤まんやるかたなし」と慨嘆しているが、自ら「いまをおいて、他にない」と大見得を切って突撃の誤判断をしたのだから、救いようがない。「貧すれば、鈍する」というが、政調会長・石破茂の時季外れの派閥解消論といい、自民党執行部の迷走も極まった。民主党国対委員長・山岡賢次は鼻高々だが、居座りを決めこんだ幹事長・小沢一郎が采配する「独裁的な国会運営」が白日の下に照らし出されたことは、必ずボディブローとして利いてくる。民心を甘く見てはいけない。

 今回の自民党の「国対敗北」の原因が、谷垣の誤判断にあることは言うまでもない。長崎県知事選挙に勝ったからと言って、しぶとい小沢が証人喚問拒否の突っ張りを外すわけがない。腹心山岡に「絶対譲歩するな」と言い続けたのに加えて、「一・一ライン」を通じて、これ見よがしに公明党代表・山口那津男と首相・鳩山由紀夫の会談を実現するなど、野党分断作戦を展開。自民党は完全に孤立した。政治家は危急存亡のやっちゃ場での判断が一番重要だが、党首討論で退陣を求め損ねたことといい、谷垣は乱世のリーダーとしての素質に問題があるのかも知れない。

 一方、何をとち狂ったか、普段は冷徹な判断を下す石破が、突如の派閥解消論である。これにタレント系の舛添要一と山本一太が乗ったが、しょせんは民放テレビ向けのポーズだろう。2月25日に各派領袖から“ぼこぼこ”に叩かれて、これも春の淡雪のように消える運命となった。町村信孝が「今自民党の派閥に何か弊害があるのだろうか」と疑問を呈したように、いまや自民党の派閥には“弊害”を出せるようなエネルギーもない。昨年の総裁選挙で各派ばらばらの対応が目立ったことから見ても、かつての鉄の団結はなく、派閥に目くじら立てるほどの問題は顕在化していない。派閥問題で“内紛”している場合だろうか。他にすることがあるだろうと言いたい。

 民主党側は「勝った勝った」とばかりに山岡以下鼻高々だが、これも自民党以上に判断が甘い。勝ったのではなくて、自民党がずっこけて、転んだのだ。山岡は小沢の手のひらで踊っているだけだから、事実上の「小沢国対」と見るのが本筋だが、小沢の国会運営の手法は、過去に例のない独善性を秘めている。野党のツートップ関連の証人喚問や参考人招致をことごとくはねつけ、問題のある「子ども手当」など重要法案の審議に次々に入っている。自民党が300議席あったころにも見られない、いわば「小沢独裁国会」の現出である。自民党時代には“疑惑の主”は国会招致に応じていた。明らかに「小鳩」ラインの政治とカネの疑惑にふたをして、自己防衛を数を頼みに展開しているのだ。公私混同も甚だしいが、民主党内から、これはという反発が生じない。国民の政治への憤まんはますます募る一方だ。マスコミも国会招致問題では強い不満を抱いている。このマグマがやがて世論調査や選挙結果となって現れることは言をまたない。そうなれば自民党は肉を斬らせて骨を断ったことになるのだが、弱体執行部の体たらくが問題だ。 
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