国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-02-19 09:47

(連載)予想されていたウクライナの混乱(2)

河村 洋  親米NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 ウクライナは政治的な一体性を欠くつぎはぎだらけの国である。民族と地域の分裂は、選挙後の混乱した紛争の原因の一つである。またウクライナは主権国家としての充分な歴史的な体験がない。ここで選挙後の混乱を理解するために、モルチャノフ氏の論文を振り返ってみたい。ナショナリストのブロガーによる「私は、ティモシェンコ氏に投票して、親露派の犯罪人が我々の大統領となるのを阻止するか、敗れるにしても、大接戦となって法廷闘争に持ち込むことを期待している。そうなれば、現大統領によって両候補とも大統領に就任する資格が停止され、緊急統治によって流血が回避されるだろう」という発言を引用し、モルチャノフ氏は2つのシナリオを想定している。

 第一は、ティモシェンコ氏がヤヌコビッチ氏の当選を受け入れないために、緊急統治が行なわれるというシナリオである。第二はウクライナ人のナショナリストとクリミア・タタール人のような少数民族が決起して、退任するユーシェンコ大統領と選挙結果を認めないティモシェンコ氏の共闘を支持するというものである。私は、ウクライナの不安定化によって、ロシアと欧米の対決は激化し、オバマ・ラスムッセン対話路線は頓挫すると見ている。

 ヤヌコビッチ氏は「自分の政権では、ユーシェンコ政権が署名した2017年のロシア黒海艦隊の撤退期限を延長して、セバストポリ基地への駐留継続を認める」と述べたと伝えられる(“Yanukovich says ready for Russian fleet, gas deals”; Reuters; February 13, 2010)。ウクライナ人のナショナリスト達は、ウクライナ領内へのロシア軍の駐留継続に激しく抵抗するであろう。

 また、ルーマニアとブルガリアにあるアメリカ軍基地とウクライナにあるロシア軍基地の間の緊張も高まると思われる。たとえ、ティモシェンコ氏が敗北を認めたとしても、キエフ周辺と北西部のウクライナ人ナショナリストを宥めることは難しい。そのため注意深い観測が必要である。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百花斉放』から他のe-論壇『議論百出』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
公益財団法人日本国際フォーラム