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2010-02-09 08:05

秘書は城、秘書は石垣、秘書は堀

杉浦 正章  政治評論家
 江戸狂歌に「白河の清きに魚も住みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」があるが、さしずめいまは「黒川の闇に魚も住みかねて、元の濁りの自民恋しき」か。民主党幹事長・小沢一郎と首相・鳩山由紀夫がまさに一蓮托生の開き直りに出た。小沢の記者会見は打って変わって、当たるべからざる勢いが戻った。「私自身2度事情の説明をいたしました。これ以上の説明はない」と説明責任を完全否定。世論調査にもかみついて、「不正なお金という報道がずっと続いた。不正な献金は受けとっていなかったという報道を同じように続けていただいて、その後に世論調査をしてほしい」と強圧的な態度を復活させた。この小沢の突っ張りに、突っ張りで応ずるのは大人げない。柳に風と受け流し、時事川柳で戒めるとするか。

 「子の手当、母が父がで言い逃れ」(筆者)。検察の不起訴の理由を見れば「嫌疑不十分」とある。嫌疑不十分とは、起訴して有罪に持ち込むだけの証拠が集まらなかったということだ。しかし最初に検察が「クロ」と見込んだであろうことは、十分推察できる。なぜ資金の流れを隠蔽したのか。なぜ借り入れ文書に署名したのか。なぜ巨額の資金を長期間タンス預金できたのか。結局秘書のせいにしてとん走をはかる古来の“政治慣習”を踏襲しただけだ。小沢は説明しなくても、検察側の冒頭陳述で「説明責任」は果たされるだろう。それを楽しみに待つとするか。朝日川柳の「秘書は城、秘書は石垣、秘書は堀」がすべてを言い尽くしている。谷垣の「限りなくクロに近い」不起訴なのだ。朝青龍は引退したが、読売時事川柳には「グレーでも、身を退く人と退かぬ人」。選者は「あいつのいない本場所。あの人がいる永田町。ああ」と慨嘆する。一蓮托生とは、極楽にいくことが前提だが、極楽往生できますかねぇ。小沢さん。

 託生のもう一人鳩山も「どうぞ戦ってください」に次ぐ重大発言。小沢に「ぜひ一生懸命頑張って欲しい」と宣うた。おそらく小沢は、2月8日午前の鳩山の国会答弁を聞いて、ぶったまげたに違いない。全国紙が一斉に「小沢辞任」の世論調査を書いた翌日だ。鳩山が何を言うかと、かたずをのんで見守ったのだろう。案の定予算委で鳩山は「小沢氏自身も責任は感じていると思っているし、私も、小沢氏に何らかの責任は当然あると思っている」と発言。慌てて小沢は官邸に乗り込んで13分という不自然な会談を行ったのだ。それも「この仕事を続けてよろしいか」と半ば脅しとも受け取れる発言だ。小沢と鳩山の関係が良く分かる。

 しかし二人とも民主党政権を選んだ国民の落胆、幻滅への眼差しはない。あるのは、数を頼んだ永田町マキャベリズムだ。マキャベリは「君主にとって最大の悪徳は、憎しみを買うことと軽蔑されることである」と述べている。まだ憎しみは買うまでには至らないだろうが、軽蔑を買っていることは間違いない。政権側には支持率逆転にもかかわらず、まだ高い政党支持率にすがる声があるが、鳩山と小沢の姿勢は間違いなく政党支持率の低落につながるだろう。読売川柳の「鳩だから、影や闇には目が利かぬ」が“軽蔑”の端緒だ。小沢には「政治的・道義的責任」などという言葉は通用しないのだ。「吾が辞書は、責任の二字禁止とす」(筆者)。

 党内反小沢グループの指揮者・渡部恒三は「これから30日とか50日たったら、小沢君は最終的には思い切った決断をしてくれる」と小沢辞任に期待している。黄門様にとって問題は、手足となる助さん角さんがなかなか腰が重く、今後小沢が党内を席巻しかねない点だ。「印籠を自分で出して、間の悪さ」(筆者)ということにもなりかねない。最後に読売川柳の傑作。「振り上げた拳で検察、頭掻き」。解説しないで済む川柳が一番いい川柳だ。それにしても検察首脳も説明責任があることは間違いない。
 
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