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2010-02-05 09:47

(連載)日米関係の将来と普天間基地移設問題(4)

中岡 望  ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
 普天間基地移設問題がどのような決着を見るのか、予想はできない。結局、当初通りの移設が行われるのか、なんらかの妥協が成立し、微調整が行われるのか、分からない。ただ、普天間基地移設問題が将来の日米関係の大きな分岐点になることは間違いない。さらにオバマ政権を神経質にさせている問題がある。それは核を巡る日米密約問題である。アメリカにとってこの問題は普天間基地移設以上に重要な問題である。アメリカはオーストラリア、ニュージーランドと軍事同盟アンザス条約を締結しているが、1985年、ニュージーランドが米海軍の核兵器搭載軍艦の寄港を拒否したため、アメリカはニュージーランドの防衛義務を停止し、現在、アンザス条約は実質的に米豪の二カ国条約となっている。アメリカは核兵器搭載軍艦の同盟国への寄港問題で、核の存在につき「確認も否定もしない政策」を取っている。

 日本では、核密約問題の調査が行われ、佐藤・ニクソンの密約書簡が発見されるなど、この問題が大きな問題となっている。仮に日本政府が密約の存在を確認し、非核三原則をどのように取り扱うのかで、日米安全保障関係は大きく変わってくる可能性がある。ニュージーランドは、核持ち込みを拒否したことで、アメリカとの安全保障関係が断ち切られてしまった。もちろん、国際情勢から言えば、日米安全保障関係とアメリカとニュージーランドの安全保障関係の状況は同じではない。しかし、核問題が日米安全保障関係の核心に触れることは間違いない。ゲーツ国防長官は、北沢防衛大臣との会談で「核密約問題が核抑止力と日米関係にマイナスの影響を及ぼさないようにすることを希望する」と語っている。この問題は安全保障のパンドラの箱を開けることになるかもしれない。

 普天間基地移設問題、核密約問題ともに、解決の道を探るのは容易ではない。いずれも国内問題であると同時に日米問題でもあり、国内問題の側面を重視すれば、日米関係にダメージを与えかねない。鳩山政権にとって極めて高いハードルであることは間違いない。

 ただ、日米安全保障関係を再検討することは、極めて重要である。東西冷戦は終わったが、東アジアでは依然として冷戦構造が残っている。改めて日米で東アジアにおける安全保障の脅威に対する評価をし直してみる必要がある。その中から新しい日米安全保障の姿が浮かび上がってくるだろう。それこそが鳩山首相の主張する「対等なパートナーシップ」への第一歩になるだろう。(つづく)
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