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2010-02-04 10:19

(連載)日米関係の将来と普天間基地移設問題(3)

中岡 望  ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
 ベーター発言はオバマ政権の立場を説明しているものと理解しても間違いではないだろう。オバマ政権の対日担当者は、恐らく以下のような状況判断をしていたと思われる。「鳩山政権は、日本で初めての本格的な政権交代であり、自民党政権の政策を見直そうとするのは当然である。普天間基地問題もマニフェストに掲げられているが、それは選挙用の主張であり、いろいろと現実の中で学習して行けば、最終的にはその見直しも行われるであろう。また、普天間基地移設問題は、基本的に日本政府と沖縄県民の間の国内問題である。したがって紆余曲折はあっても、最終的には鳩山政権は当初の合意通り普天間基地の移設を行うだろう」との見方である。したがってオバマ政権の立場は、当面「ウエイト・アンド・シー」で、状況の推移を見守るというものであった。

 だが、日米両政府の間に大きな認識ギャップがあった。鳩山政権の中で普天間基地移設を巡って意見は分かれていたようだが、少なくとも鳩山首相は普天間基地移設に関してマニフェストを変更する気持ちはなかった。さらに普天間基地移設問題は国内問題であるという認識以上に、日米安全保障のあり方を巡る問題であるとの認識が強かった、のではないかと思われる。鳩山政権が明確なメッセージをオバマ政権に伝えなかったことも、さらに状況を複雑化させてしまった。日米両国で政府が同時に変わったために、緊密な意見交換を図るルートが確立されておらず、その結果として情報がお互いのメディアを通して伝えられることになったからである。

 鳩山首相は「日米の対等なパートナーシップ」を主張していたが、その具体的なイメージは明確に語られることもなく、また当然のことながらアメリカ側に伝えられることもなかった。その結果、オバマ政権からすれば、鳩山政権は何をしたがっているのかが理解できない状況が続き、相当苛立ちが高まっているのは間違いない。

 東京で行われた鳩山・オバマ会談で普天間基地移設問題を検討する作業部会の設置が決まったが、ここでも同床異夢の状況であった。鳩山首相は抜本的に普天間基地移設問題を見直すことをイメージしていたのに対して、オバマ大統領は協定をどう実施に移すかを議論する場として理解していた。同じようなコミュニケーションの問題は、コペンハーゲンでも起こったと推測される。鳩山首相はクリントン国務長官と短時間会談した後、「クリントン長官は普天間基地移設問題の決定の先送りに理解を示した」と発言している。だが、12月21日、クリントン長官は藤崎駐米大使を国務省に招き、「2006年の普天間基地移設合意の早急な実施を日本に求める」ことを表明するという異例の行動に出た。これは明かに鳩山首相のコペンハーゲンでの発言を否定する意味があったと理解される。鳩山・オバマ会談と同様に鳩山・クリントン会談でも非常に深刻なコミュニケーション問題が発生している。(つづく)
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