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2009-12-02 07:42

鳩山の「申告漏れ」は、「脱税」が世間の認識

杉浦正章  政治評論家
 明らかに「脱税」を「申告漏れ」で逃れようとしているのが、首相・鳩山由紀夫の戦略だ。鳩山の国会答弁を分析すれば、これまで数々の政治家が「脱税」と紙一重の「申告漏れ→修正申告」で逃れてきた路線をたどっていることが分かる。しかし首相にとって問題なのは、総額11億円にものぼる鳩山家の資金提供の額だ。これを「知らなかった。驚いている」で言い逃れることが可能だろうか。東京地検が人気の高い首相だからといって躊躇したら、御政道の正義は成り立たない。

 参院本会議の鳩山答弁は、母親からの資金を「知らなかった」ことを前提に(1)国民の納税義務は承知している、(2)国民としての義務を果たすのは当然、(3)資金提供があったら法に照らして適切に対応、というものだ。簡単に言えば「秘書がうっかりミスしましたので、修正申告します」ということだ。しかし首相答弁は、軸となる2つの点で破たんしている。1つは「知らなかった」だ。母親からの資金提供は2002年の民主党代表選挙後に始まっている。代表としての交際費が重なり、足りなくなったので、元公設第1秘書が「独断」で母親と交渉、月1500万円の提供を受けることになった、という筋書きだ。しかし、いくらアバウトでも、秘書が鳩山自身と相談せずに、巨額のカネを、例え母親からでも提供を求めることは論理的にあり得ない。かならず鳩山に相談しての対応だろう。

 次ぎに、単に「申告漏れ」で逃れるには額が大きすぎる。どう見ても相続税または贈与税回避のための、政治資金団体を経由した母親の資金移転である。元秘書は毎月現金で母親から資金を受け取っていたというが、これも不自然だ。口座経由では、ばれる恐れがあることを認識していた証拠だ。申告漏れとは、税務署と納税者との見解の違いによって、納税額に差が生じ、訂正するケースだが、とても額が大きすぎて「見解の相違」などで言い逃れができるものではない。当然重加算税の対象にもならざるを得ないだろう。常識的には首相と秘書が連携を取った「脱税」疑惑が濃厚となる。問題は、地検がそこを突くかどうかだ。各紙報道によると東京地検特捜部は、首相本人に対する事情聴取を見送る方針を固めたもようだという。ただ首相の見解をただす必要があるとして、上申書の提出を求める方向で検討しているようだ。首相側は上申書を国会答弁の線で出すに相違あるまい。

 しかし、首相の「知らなかった」発言は、聴取なしでは覆せないのではないか。またいったんは濃厚だった首相の実母(87)の事情聴取も見送る方針だという。秘書の在宅起訴といい、どうも地検の腰が引けている、としか思えない対応が出てくる。まさか地検に政治圧力がかかっているとは思いたくないが。鳩山は参院本会議で、「私に対する司法の判断を待ち、その結果に基づき、首相としての使命を果たしたい」と発言した。これは、自身の刑事責任が問われなければ、続投する意向を表明したともいえる。自身の刑事責任の有無という判断基準を設定して、「秘書の責任は、政治家の責任」のブーメランをかわそうという姿勢だ。しかしたとえ「申告漏れ」で逃れ得ても、世間の認識は「脱税」となるだろう。大津波はいずれにしても襲いかかる。鳩山がこの窮地を脱出するのは容易ではない。
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