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2009-11-02 15:44

(連載)ドル基軸体制の動揺と核拡散危機の増大(1)

足立 誠之  元インドネシア中央銀行顧問
 本年3月中国の中央銀行である人民銀行の周小川総裁が現在の米ドルを基軸通貨とする国債通貨体制を批判し、SDRをベースとする新たな国際通貨体制の構築を提唱する論文を発表しました。時を同じくして中国は、貿易相手国との決済通貨を人民元とする政策を積極的に展開し始めております。本稿はこうした中国の新たな政策の展開が如何なる背景、動機に基づくものであるのか、更にそれが今後の国際政治にどんな意味合いを持つのかを探るものです。

 核兵器の脅威について日本国民程敏感な国民はないでしょう。ですからこの問題についてはどんな些細なことでもマスコミの報道、あるいは政治家の言及のないものはない筈である、と多くの人は思っているでしょう。然し現実はそうではありません。なぜならば政治家もマスコミも1990年代から米中間に存在してきた最大の確執について、一度として言及したことがないからです。その確執とは中国企業、それも国営大企業が、核不拡散をふくむ国際的な諸協定に違反して、大量破壊兵器(WMD)及びそれを運搬するミサイルなどの運搬手段(DS)に係わる技術、部品その他を、パキスタン、そして懸念国であるイランやシリアなどに売却してきたことです。

 クリントン、ジョージ・W・ブッシュ両政権は之に対して強く抗議し、中国政府も国際的な協定を遵守し、不拡散に協力する旨を回答するのを常としましたが、中国国営企業の拡散行為は収まらなかったのです。アメリカは2001年9月の9.11同時多発テロ以降大量破壊兵器・運搬手段が懸念国を通じてテロリストの手に渡る危険性がたかまったと判断し、それが契機となり、アフガンへの出兵、イラク戦争に繋がったことはご承知の通りです。中国から懸念国への拡散行為が行なわれていることについては、米国議会が2000年10月に設立した米中関係についての調査諮問機関であるUSCC(U.S.-China Economic & Security Review Commission、米中経済安全保障レビュー委員会)の02年の第1回報告書以降の総ての議会宛年次報告書に詳細に記載されています。

 こうした中国企業による拡散行為がやまないことに対して、アメリカ政府は制裁を実施してきました。然しそれでも違反行為は収まらなかったのです。USCCの年次報告書には常習的な違反企業としてNORINCO(北方工業公司、中国最大の兵器製造企業)をはじめとする錚々たる企業名が具体的に記されています。制裁の効果が上らないことに対して、USCCは議会宛報告書に制裁の強化を勧告します。(つづく)
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