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2009-10-22 07:44

正真正銘の小沢人事:斎藤郵政新社長

杉浦正章  政治評論家
 焦点は元大蔵事務次官・斎藤次郎の日本郵政社長起用が「小沢人事」であるかどうかだが、まず断定してもいい。小沢人事だ。亀井人事でもなく、ましてや鳩山人事でもない。民主党幹事長・小沢一郎の“巧み”さは表に出ないで、非難の矛先をかわし、世論の波風を首相・鳩山由紀夫に向けさせることだ。院政の院政たるゆえんであろう。先に行政刷新会議に小沢にきわめて近い京セラ名誉会長・稲森和夫を起用したのと同じだ。この政権は小沢人脈による二重構造であることが、すべての重要ポイントを解析すれば証明される。問題は斎藤に、世上言われているほどの手腕・能力があるかどうかだ。経緯を分析すると、鳩山が亀井静香から人事を聞いたのは、20日の夜だ。斎藤が聞いたのが午後8時頃だというからその前後だろう。さすがに鳩山は、脱官僚を声高に唱えてきただけに「いわゆる元官僚じゃないか」と異議を挟んだ。鳩山は「議論もした」とも述べている。相当なやりとりがあったに違いない。この「異議を挟んで、議論した」ことがポイントだ。

 なぜなら、鳩山が知らされていなかった証拠だからだ。これに対して周到に準備をしていた亀井が、「官僚をやめて14年たっている」と応じ、鳩山は説得された形だろう。斎藤は「“正式に”話があったのは昨夜8時ごろ」というのだから、それに先だって非公式におそらく小沢から“ほのめかし”があったことは間違いなかろう。小沢からの話は「全くなかった」としているが、まずあり得ない。斎藤といえば小沢、小沢といえば斎藤の間柄だ。小沢も「斎藤デン助が・・」としょっちゅう話題にする仲だ。小沢が田中角栄の大蔵省支配を見習って打ち込んだ、大蔵省への橋頭堡でもあった。細川政権時代の悪名高き国民福祉税構想も、小沢が斎藤と組んで仕組んだ仕掛けだった。状況証拠はそろっているのであり、背後の闇は状況証拠で見るしかない。亀井は小沢の言うとおりの人事をやったと見るのがまっとうだろう。

 ところで斎藤に最大の民間会社を経営する能力があるかどうかだ。官僚だからというわけではない。過去の例をあげれば、国民福祉税構想は、細川の殿様を乗せることは出来たが、世論のごうごうたる批判でつぶれている。最大の重要ポイントで政権をつぶす構想を作った張本人である。ピントの狂い方は相当なものがあるといわざるを得まい。この点毎日新聞も社説で疑問を呈している。同紙によると、格落ちとも言える東京金融取引所のトップに就いたものの「本業の金利先物取引は低迷したままだ。この間、郵政問題について公の場で目立った発言はない。自民党に煙たがられた政治的センスや剛腕は10年以上前の話で、健在かどうかは不明である」という。民主党、特に小沢の“相談役”的な立場でもあるが、その民主党の経済・財政運営は、赤字国債一つ取っても迷走している。荒唐無稽(むけい)な埋蔵金や節約論議を見ても、適切なアドバイスが出来ていたのかいぶかしい。したがって従業員25万人の日本郵政グループを率いる経営能力があるかどうかは未知数である。

 マニフェストの重要ポイントを覆す鳩山政権の在り方には、ほとほとあきれかえるものがある。最大のものは赤字国債の発行だと思っていたが、それにまさるとも劣らない人事だ。官僚を毛虫のように嫌い、「脱官僚」を何かの一つ覚えのように唱えてきた鳩山は、もうその口癖を言えなくなった。新聞論調も朝日が「民から、官へ逆流ですか」、毎日が「鳩山政権への不審の念がわく」、産経が「郵政見直し、民営化路線の逆行は残念」と、かってなく厳しい。しかし読売だけは「意外な大蔵次官OBの起用」と大人しい。文中でも何と人事を歓迎している。「適材適所であれば元官僚といえども、起用をためらう理由はない。民主党が人材活用の手法を転換したのなら歓迎である」とした。読売新聞グループ本社社長・主筆の渡辺恒雄と斎藤が親しいことに配慮したとは思いたくないが、やっぱり配慮したのだろう。斎藤は2年前の大連立騒動で、小沢と渡辺の間で一定の役割を果たしているといわれている。傑作なのは日テレ・ズームインで辛坊治郎 が各社の社説を紹介しながら、読売だけは飛ばしてしまったことだ。辛坊クンもナベツネさんが怖いらしい、しかし若いうちからゴマすると大成しないゾ。
 
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