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2009-10-12 14:34

藤井厳喜氏の鳩山「友愛外交」論を読んで

角田 勝彦  団体役員
 3回に分けて連載された藤井厳喜氏の「鳩山『友愛外交』の本質はなにか?」を読ませていただいた。「日本をシナの属国化しようとしているのが鳩山・岡田外交なのである。鳩山首相の『東アジア共同体』への賛同は、祖父・鳩山一郎の対ソ国交正常化を何百倍も上回る売国奴外交に他ならない」との結語に至る論評には、表現上も問題になりかねない部分もある。しかし、ここでは、とりあえず冒頭からの事実認識上の問題点を指摘したい。すなわち、第1回での「待望の首相となった鳩山は、吉田が出来なかったソ連との講和条約締結に意欲を燃やし、これに成功はした。しかし、北方領土の返還はならず、当時まだシベリアに抑留中だった日本人捕虜の帰還も遅れた。ここまでは、誰でもが知っている話である」との部分などである。

 鳩山一郎首相は、ソ連との講和条約締結に「成功」していない。1956年10月の日ソ共同宣言で国交回復を実現したが、講和条約は北方領土問題の解決待ちになったのである。ソ連は、1951年9月締結のサンフランシスコ平和条約の調印を拒否し、我が国の国連加盟にも反対していたが、1953年のスターリン死去と朝鮮戦争の休戦などから道が開け、1954年12月首相になった鳩山一郎の日ソ交渉が始まった。

 鳩山一郎首相の主な交渉目標は、抑留者帰国と北方領土問題解決にあり、「日本人捕虜の帰還も遅れた」とは言えない。1947年から56年にかけて、抑留者47万3000人の日本への帰国事業が行われたが、日ソ共同宣言第5項(宣言発効とともに有罪判決の日本人も送還)により56年12月第11次の集団引き揚げ1025人が帰国している。我が国の国連加盟も1956年12月実現した。
 
 なお、曽野明回顧談(『ソビエト・ウオッチング40年』のことか?)を引いて、藤井氏は「吉田外交の巧妙な交渉により、ソ連側は(在日)大使館開設の代償として、北方領土の返還、ならびにソ連抑留中の日本人捕虜の即時帰国を承認していた」と書かれているが、サンフランシスコ平和条約により、ソ連も参加した連合国軍最高司令官総司令部の対日理事会は解消されたものの、ソ連は「占領継続」を名目として東京の対日代表部(事実上の大使館)を維持していたのである。
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