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2009-10-08 13:13

(連載)FーX選定問題に見る防衛政策の問題点(2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 F-XにF35が最適かどうかは措くとして、一般論として、武器輸出三原則を緩和しなければ、我が国が武器の多国間共同開発に参加することが妨げられることになる。これからの世界的潮流は、武器の開発は多国間がメインとなる。そのようにするのが経済的で、効率的だからである。それに日本が参加できないとなれば、武器調達に関して選択肢が著しく狭められてしまうことになる。一方、多国間共同開発に参加できれば、我が国の防衛産業の衰退を防ぐことにも繋がる。したがって、武器輸出三原則の緩和は必須である。

 北沢防衛相は、今月20日に予定されているゲーツ国防長官との会談で、F35の導入を軸に調整することを伝達するようだ。ということは、10億円を唯々諾々と支払うということである。そして、2011年度予算案から、F35の購入経費を計上する方向で本格的な検討に入ると伝えられている。しかし、その前に、日本が置かれている安全保障環境とそれに対処するための戦略を再吟味すべきであろう。仮にF35を導入するとしても、それは約10年も先の話である。その間にも、中国空軍や極東ロシア軍の戦闘機は次世代型へと急速な発展を続けるのである。

 今回の米側の請求は、「対等な日米関係」を掲げる民主党政権であれば、まさに「米国に物を申す」のに最適な場面ではないか。これは「買い物」なのである。例えば、欧州共同開発機の導入を真剣に検討することがあってしかるべきである。欧州側は同機のライセンス国産を積極的に認めることを表明しており、防衛産業の維持の面からもメリットがある。アフガンや米軍再編といった米国の戦略の核心部分に「物を申す」よりも、F-X選定問題で物を申す方が、よほど現実的で、実利的である。これができないようでは、民主党の掲げる「対等な日米関係」など看板倒れである。

 F-X選定問題をめぐる迷走では、我が国の防衛政策に関する次のような問題点が改めて浮き彫りになった。(1)機密保護体制を万全にすること、(2)確固たる戦略に基づいた武器調達を行うこと、(3)多国間での共同開発に参加することを可能にするために武器輸出三原則を緩和すること、(4)我が国の防衛産業の維持に努めること、である。以上のような問題点を早急に解決しなければ、我が国の国防の基盤は大いに侵食されていくであろう。(おわり)
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