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2009-09-28 07:33

自民新体制苦渋のスタート

杉浦 正章  政治評論家
 「今日はどこまで行ったやら」と全く関心の持たれていなかった自民党の総裁選挙が、今日28日に行われ、ほぼ間違いなく谷垣禎一を選出する。谷垣を形容すれば“でも・しか総裁”だ。「谷垣デモしょうがない」「谷垣シカいないから・・」である。まあ自民党としては麻生太郎にこりて知性派を選ぶのだろうが、臨機応変の知略とはほど遠い。線が細くて攻撃力・破壊力にも欠ける。総裁選の論議を見てもここまで落ちぶれたかという馬鹿げた話ばかりだ。貧すれば鈍するとはよく言ったものだ。これでは自民党は当分、ひたすらに民主党政権の“敵失”に期待するしかあるまい。まあ、何年かかろうと当面臥薪嘗胆するしかない。

 とにかく人材枯渇だ。3代続いた首相が「自民党の“残滓(ざんし)”であった」と過去に書いたが、やはり総裁選候補も「残滓甲乙つけ難し」の戦いだった。これはという候補は“ドンの残滓”森喜朗がつぶしてしまい、有力候補を谷垣に絞ったからしかたがない。その森の「クビを切れ」とエクセントリックを地でゆく河野太郎が怒鳴れば、「まあまあ全員野球で」と谷垣が抑えにかかる。名前も知られなかった西村なにがしが優等生みたいな発言を繰り返す。「もうやってくれやってくれ」と言いたくなる。この体たらくで政権奪回など出来るのだろうか。2大政党制においてはいったん選挙で政権が代わると、それを取り戻すのは容易ではない。細川政権は烏合(うごう)の衆だったから9か月でつぶれた。米国の民主党は政権奪回までに8年、英国の労働党は何と18年も野党であった。まず、自民党は枯渇した人材を育成することから始めるしかないのではないか。東京新聞が27日の社説で「まず『野党力』磨け」と主張しているとおりでもある。

 この自民党の惨状をおそらく“冷笑”している民主党幹事長・小沢一郎の「院政戦略」はどうなるのだろうか。基本的には鳩山が失敗すれば解散はせず、首相の首のすげ替えで何度でも対処し続けるだろう。鳩山を菅直人や岡田克也へと、すいすいと代える。自民党がこれまで党内で政権交代をやって来たように、民主党は党内での「疑似政権交代」が可能なのだ。選挙バブルでも数を持っている小沢は強みだ。308議席というのは有権者がそれを許したということなのだ。また自民党に比べれば人材も豊富だ。そうこうすれば4年は瞬く間に過ぎ去る。その時は再度「有権者の目を欺く“マニフェスト”なるもので着飾って選挙すればよい」くらいに考えているのだろう。

 しかし、出だしを観察していると民主党政権は“高転びに転ぶ”感じがしてならない。選挙バブルに浮かれて、首相以下舞い上がっている。重心が極めて高いうえに社会主義かと思われる政策が幅を利かせているのである。国交相・前原誠司は早くも八ッ場ダムで、にっちもさっちも動きが取れなくなった。一番の難所に最初から突撃するのは政治ではない。鳩山もCO2の25%削減で財界・産業界から総スカンを食らいつつある。外交・安保でも重要ポイントをすべて回避しておいて、「外交デビューに成功」は甘すぎる。亀井静香がとち狂ったように打ち出した“禁じ手”平成の徳政令(モラトリアム)も、政権内部から問題視され始めている。亀井は27日のテレビで「嫌なら私を更迭すればいい」と早くも鳩山に対して開き直っている。「私の発言で株価が下がるような銀行は銀行業を営む資格がない」と自らの職務をわきまえない暴言も吐いた。これでは内閣はCO2で産業界を敵に回し、徳政令で金融業界をも敵に回すことになる。カメが作った最初の連立“亀裂”の芽生えだ。言ってみれば民主党政権はすきだらけだ。問題はそこを谷垣が突く能力があるかどうかだ。決着は選挙ばかりとは限らない。政界再編もあり得る。いずれは本格化する政権内部の亀裂をとらえ、自民党が民主党の分裂をはかり、政界再編の大舞台回しの仕掛けが出来るかどうかだ。総選挙大敗で脳しんとうを起こしたままの自民党では、まだまだ無理かも知れない。 
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