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2009-09-27 00:14

(連載)鳩山・メドベージェフ首脳会談―幻想を抱くな(1)

袴田 茂樹  青山学院大学教授
 9月24日の各紙夕刊は、ニューヨークでの23日の鳩山首相とメドベージェフ大統領の首脳会談について、第1面で大きく報じた。タイトルは北方領土に関して、「現世代で解決」とか「交渉を加速」というものだ。首相が述べたことで特に重要なことは、「政治、経済を含む諸問題を『車の両輪』のように進めていく」ことを強調したことだ。これは、私が幾度も、経済関係のみが進展していることに懸念を表明し、9月23日の読売新聞朝刊の「論点」で提言したこととも軌を一にしている。首相がこのことをきちんと主張したことは評価したい。

 しかし、新聞で大きく取り上げられた「我々の世代で解決」という首相が述べた言葉は、昨年のリマでの麻生、メドベージェフ首脳会談以来何回も使われた言葉で、ロシア側からはそのための具体案の提示は一切なく、これは単なる努力目標で目新しさはない。過大な期待は禁物である。

 大統領の発言に関して、わが国の報道機関がほとんど報じていないことで、特に私が重視していることがある。それは、大統領が「独創的なアプローチを発揮する用意がある」と述べたあと、「同時に、法的な範囲の中で議論を行うことも重要」と述べていることだ(外務省ロシア課 報告概要 9月23日)。ロシア側の解釈では、平和条約締結後に歯舞、色丹を引き渡すとした日ソ共同宣言(1956年)だけが両国の国会の批准を経ているので法的拘束力を持ち、4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するとした東京宣言(1993年)の法的拘束力を否定している。つまり、大統領の発言は、「日ソ共同宣言の枠内で」と解釈できる。

 私は、プーチン首相もメドベージェフ大統領も、日ソ共同宣言を一歩も出ていないと指摘してきた。しかも、ロシア側の同宣言の解釈は、2島の引き渡しで最終決着というものだ。今回の話し合いも、ポーズとしては一見前向きだ。しかし、「独創的アプローチ」の発言に関しては、その内容を首相が確認したにも拘わらず、大統領からは、具体的な説明は一切されなかった。つまり、現在においても、ロシア側は日ソ共同宣言を、しかもロシア側解釈を一歩も出ていないということである。換言すれば、最も肝心な国後、択捉の交渉に関しては、何の約束も言質も与えていない、ということである。(つづく)
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