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2009-09-25 09:37

確認された米国と鳩山連立政権のズレ

鍋嶋 敬三  評論家
 鳩山由紀夫首相はオバマ米大統領との初会談(9月22日)で「信頼関係のきずなができた」と胸を張った。日米同盟の強化では一致したものの、3党連立政権合意の米軍再編・在日米軍基地見直し、地位協定改定の提起など安全保障上の課題には触れず先送りした。政権公約(マニフェスト)に「対等な日米同盟関係」「主体的な外交」「東アジア共同体の構築」などを掲げた鳩山民主党に対しては「米国離れ」の懸念が米国内にある。初の首脳会談で半世紀にわたる同盟関係の強化を再確認するところから出発せざるを得なかったこと自体が、米国と鳩山連立政権とのズレを物語る。総論(同盟強化)賛成、各論(米軍再編)反対では同盟関係は機能しない。鳩山政権にとっては同盟をいかに管理して行くかが日米関係の行方を左右するカギになる。

 オバマ大統領は「日米同盟関係は安全保障だけでなく経済繁栄の基盤でもある」と語った。日米同盟が直面する課題の第一に沖縄の負担軽減のための普天間基地の移設・海兵隊のグアム移転を含む米軍再編計画があり、既に計画の一部が実行されている。普天間問題は日米合意から13年間もたなざらしで米国のいら立ちは強い。米軍再編は全世界的な軍事戦略再構築の一環であり、日本だけを切り離すわけにはいかないからだ。核不拡散・軍縮、テロ対策、気候変動、世界経済危機など多国間関係でも日米同盟が果たす役割は大きい。海上自衛隊によるインド洋での給油活動は国際的なテロ対策の一環だ。

 1996年の日米安全保障共同宣言では、アジア太平洋地域の安全と繁栄のためのパートナーシップを確認する「安保再定義」を行った。しかし、97-98年のアジア通貨危機を巡って日米関係のきしみが表面化した。鳩山首相はオバマ大統領と会う前夜、故錦涛中国国家主席との初会談で「東アジア共同体の構築」への日中協力を呼び掛けた。米国から見ればアジアでの「米国外し」と映りかねず、警戒感が強まる恐れも否定できない。

 鳩山首相は国連気候変動首脳級会合で、2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する日本の中期目標を公約した。欧州連合(EU)が真っ先に歓迎したのは国際交渉での対米主導権を握る思惑からだろう。安保や経済での日米間のズレが次第に「活断層」を形成し、激震の種になる可能性も秘めている。今回の日米首脳会談はこれまでうたってきた「世界の中の日米同盟」(ブッシュと小泉純一郎)、「日本は偉大なパートナー」(オバマと麻生太郎)と比べて明らかにトーンが下がっている。連立政権による日米関係の第一幕は閉じた。鳩山首相が言う「友愛」外交はつかみどころがないが、「同盟強化」はずっしり重い意味がある。今後の日米関係の行方は確固とした歴史観と世界観に基づいたグランド・デザインを描いて、包括的で具体的な政策を示せるかどうかにかかっている。それが日米同盟の信頼性を高め、有効に機能させるための条件である。
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