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2009-08-25 09:16

(連載)「民主党政権」で日米同盟は揺るがぬか?(2)

鍋嶋 敬三  評論家
 同盟の根幹をなす安保政策について、民主党は地位協定改定などを「対等」の象徴と考えているのかも知れない。しかし、口で言うのは易し、である。「対等」というなら、米国はより大きな責任と役割、資金分担を求めてくるだろう。日本の安全保障の基本方針は防衛計画の大綱(2004年12月閣議決定)に明記されている。(1)専守防衛、(2)軍事大国とならない、(3)非核三原則、(4)節度ある防衛力整備、(5)米国の核抑止力に依存である。日米の外務、防衛当局者間で7月、「核の傘」で定期協議を立ち上げることで合意した。民主党の言う「対等」とは「基本方針」を転換して、核を含む「拡大抑止」に依存せず、自主防衛力の強化に向かうということなのか、その中身については一切説明されていない。

 鳩山代表は、非核三原則の「法制化」について、連立政権では参院でキャスティングボートを握る社民党の要求に対して、「検討する」との言質を与えた。しかも三原則の扱いについて、鳩山氏の発言が二転三転したいきさつがある。核の傘を日本に提供している米国からすれば、民主党の同盟政策に疑念を生じさせる姿勢である。日米安保条約は2010年に50周年の節目を迎える。北朝鮮の核・ミサイル開発の進展、21年間2桁の軍事費の伸びや海軍力の増強を進める中国の軍拡など、アジア安保情勢の変化を踏まえた安全保障戦略を再構築する時期である。今年から来年にかけて、日本では防衛計画の大綱の見直しが、米国では4年ごとの国防計画の見直し(QDR)が、課題だ。同盟関係にある以上、双方の見直し作業は互いに連関をもってくる。安保再定義の機運が出てきてもおかしくない情勢にある。

 各党の公約を検証した民間のすべてのシンクタンクが、民主党の支持組織である連合を除いて、外交・安全保障政策では自民党に軍配を上げたのは、民主党のあいまいな路線を危惧したからだ。鳩山代表が口にする「オバマ大統領との信頼関係」を築く具体的な提案はあるのか。「対等な日米関係」が内容が明らかにされないまま、一人歩きすれば日本の役割拡大を米国が持ち出す格好の口実にされかねない。民主党が主張する米軍再編見直しや核の「持ち込み禁止」など日米同盟の根幹にかかわる問題について、どのような戦略構想の下で新たな安保体制を構築していくのか。全体像を提示するのが責任政党としての責務ではないか。「政権につけば何とかなる」では、付け焼き刃の場当たり主義に陥り、民主党が最も力を入れる「官僚丸投げの政治」からの脱却することはできず、オバマ大統領の信頼も得られないだろう。(おわり)
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