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2009-08-24 18:10

(連載)64回目の終戦記念日に思うこと(1)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 今年も8月15日、武道館で政府主催の戦没者慰霊式典が行われ、天皇陛下、麻生総理、その他の方々が戦没者への追悼を述べ、平和を維持することの重要性を強調した。NHKをはじめ、マスメディアも例年通り、戦争体験を語り継ぎ、平和の尊さを強調する報道を行った。これらの報道を見ながら、私の感じたことを次の通り述べたい。

 こういう報道の主たるテーマは、平和を強く願望しよう、平和を祈ろうというものである。「絶対に戦争をしてはならない」ということが、強調された。しかし「戦争か、平和か」という重要なテーマについて、この段階で議論が止まっていては不十分である。戦争をなくすために自分は平和を願望する、戦争をしないという決意をするだけでは全く不十分である。

 なぜならば、こういう考えは、「戦争は、自分が仕掛けない限り起こらない」という前提に立っているからである。世界の歴史を見れば、戦争の発生は複雑なプロセスの結果であって、「仕掛けないから戦争にならない」という前提は、間違っていると断定してよい。それが、各国が国防のために軍備を備え、核兵器の保有や核の傘を必要と考えている理由である。平和を願望すれば、平和になるというのは、魔術的思考でしかない。

 戦争の体験が悲惨なものであったことに疑いはない。しかしそれは日本人だけの体験ではない。第2次大戦での戦死者数と民間人の死者数は諸説があり、良く判らない点があるが、英タイムズ紙がまとめた資料を基に、大雑把に戦死者の多い順に挙げると次のとおりである。
   第1位:ソ連―戦死者 1450万、民間人死者 700万以上
   第2位:ドイツ―戦死者 285万、民間人死者 230万
   第3位:日本―戦死者 230万、民間人死者 80万(この数字は日本の資料)
   第4位:中国―戦死者 132万、民間人死者 1000万以下
   第5位:ポーランド―戦死者 85万、民間人死者 578万
   第6位:ルーマニア―戦死者 52万、民間人死者 46万
   第7位:オーストリア―戦死者 38万、民間人死者 14万
   第8位:米国―戦死者 29万
   第9位:イタリア―戦死者 28万、民間人死者 9万
   第10位:英国―戦死者 27万、民間人死者 6万
   第11位:仏―戦死者 21万、民間人死者 17万

しかし、各国における戦争体験の語られ方は、8月15日に日本で報道されるようなものではない場合が多い。(つづく)
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