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2009-08-24 07:40

小沢絶対支配の民主党政権の構図

杉浦正章  政治評論家
 有権者が圧倒的多数で民主党を選ぶと言うことは、何を意味するか。マニフェストに盛りだくさんあるばらまき政策はさておくとして、民主党を選択することにはいろいろな意味がある。出来るかどうかは別として、霞が関改革の選択であり、内需主導型景気刺激策の選択であり、「核持ち込み禁止明言」が象徴する危うい日米安保・外交政策の選択である。そして極めつけが、正真正銘の「小沢院政」の選択である。繰り返すが国民は知ってか知らずか「小沢院政」による権力の二重構造を紛れもなく選択することになるのである。海部政権、宮沢政権、細川政権、小渕政権と設立してはつぶし、参画してはつぶし、1人だけ生き延びてきた小沢一郎に、またまた「院政」の出番がやってきたのである。獲得しそうな300議席のうち小沢チルドレンが100人余り,小沢シンパが50以上と、小沢は民主党の半数以上の勢力を背景にしそうだ。数の上での基盤は、かって自民党で100人を上回る派閥を背景にした田中角栄の比ではない。

 自民党幹事長時代に海部俊樹を担いだことを、「御輿は軽くてパーがいい」とうそぶいた小沢だが、宮沢が「パー」であるかは別として、おおむね小沢の担ぐ首相には共通点がある。共通して人がよく、すばしっこい小沢によって「生き馬の目を抜かれる」タイプである。小渕恵三にいたっては脳梗塞を小沢自由党の連立解消翌日に発症しており、まさに小沢は命を縮めるほどの相手であった。殿様・細川護煕が小沢の掌中にあったことは、「権力の二重構造」の流行語からも分かる。「第五次院政」の対象となる鳩山も、小沢から見れば紛れもなく「軽くてパー」の範ちゅうに入る。小沢を愚直にも「西松疑惑」の荒波から守り抜き、その“忠誠”の覚え目出度きを得て、後継代表の座を仕止めた経緯もある。

 鳩山は「細川政権では与党と政府の二元的な使い分けがあったが、新政権は権力の二重構造的な状況にはならない」と述べている。それはそうだろう。鳩山の場合は、小沢との“一体構造”であるから、その意味では確かに二重構造ではない。小沢と鳩山は密接不可分の絶対支配の“上下構造”だ。それでは小沢は歴代政権の派閥実力者が手にしたことのない数の“派閥”を背景に、その権力をどう活用するのだろうか。まず相対的に少数になる党内左派の押さえ込みに使うことになるだろう。自民党田中派に所属した小沢、鳩山、岡田克也にとって、左派は本来相容れない勢力である。日の丸・君が代反対の日教組や旧社会党左派の押さえ込みだ。数の圧力は社会党に先祖返りしている社民党へのけん制にもなろう。この党勢を維持して来年の参院選でも過半数を達成すれば、社民党との連立は不要になるからだ。

 しかしいまは、はやし立てているマスコミの目は、やがて民主党政権の構造的欠陥である「小沢院政」に焦点を当てることになるだろう。その土建政治体質が政権に影響を及ぼすことは確実であり、土建業界の小沢詣では、直接か間接かは別として、常識と化すだろう。土建業界の目は、いまや小沢に集中していると見るのが常識だ。口利きによる公共事業の配分などに、小沢が決定的な影響力を持つことは間違いない。もっとも鳩山自身の政治資金虚偽記載問題と併せて、小沢の第一秘書の「西松建設」問題での公判はまだこれからであり、さらなる疑惑へと発展する可能性もある。土建業界に限らない、各種業界は、いま必死になって事実上のドンである小沢とのつてを見つけようとしているに違いない。このように民主党政権は小沢という台風の眼を抱えてのスタートとなる。勢いづかせるのも小沢。空中分解に発展させるのも小沢であろう。
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