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2009-08-18 09:31

(連載)国民の政治姿勢の変化に期待する(2)

角田 勝彦  団体役員
 マニフェストそのものは一般には長すぎ難しすぎるにしても、他者の批判を通じ要点は判るし、ぼろや各党が意図的に隠している問題点も出てくる。過熱気味である各党の相互ケチ付け合戦(ネガティヴ・キャンペ-ンもある)も役に立っている。反発を受け、マニフェストが修正されることもある。民主党は7月27日にマニフェストを発表後、いくつかの項目を修正していたが、8月11日には5カ所の文言修正を行った最終マニフェストを発表した。

 公示前とはいえ、ブレとの批判は免れない。党内からの批判もある。「米国との間でFTAを締結し、貿易・投資の自由化を進める」と明記していたのを、全国農業協同組合中央会などが「農業に壊滅的な影響を与える」と猛反発したことを受け、「協定締結」を「交渉を促進」に修正し「食の安全・安定供給、食糧自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない」との一文を追加したことは、小沢一郎代表代行からも「(自由化で)農産物の価格が下がっても、所得補償制度で農家には生産費との差額が支払われる(から、修正は不要)」との異議を招いた。

 なお書かれていなかった項目の追加は、むしろ歓迎すべきである。触れていなかった「経済成長戦略」について、8月4日、日本経団連へのマニフェスト説明会において、岡田幹事長は「子ども手当などによる内需中心の成長」などを説明していたが、最終マニフェストで「子ども手当などで、消費を拡大。農林水産業、医療・介護分野で雇用を創出する」旨追加した。法人税率の引き下げなどによる企業の競争力強化を通じた成長を求める経団連との隔たりが浮き彫りになったが、国民に検討の材料を増やしてくれることは非難すべきではない。とくに自民・民主両党がばらまきの多寡を競うようなかたちになって、どこが違うのか判断に困る社会経済政策において、しかりである。細かい政策を見る必要が生じているからである。

 もちろん、マニフェストで提示される広汎かつ複雑なテーマを判断するのには、大変な知識と能力が必要である。マニフェストの修正が示すように、政治家自身もその理解と判断に困難があるようである。各党により何でもできる「スーパーマンの計画」が噴出している現在の選挙の際、とくにそうである。国民は、選択にあたり、単純化された認識に基づき動くほかない。しかし、関与、とくに政治的権利の行使を通じ、国民が自己の利益を正しく認識しようとする限り、ミーイズムがもたらしかねない親方日の丸の専制の危険は薄らぐ。歓迎すべき動きである。今回マニフェストなどにより、国民の関与の度合いが深まることは、我が国における民主主義の発展にとって貴重な経験になろう。この選挙までの40日は前例となるかも知れない。(おわり)
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