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2009-08-12 10:25

親露政権下でのチェチェン社会の無法化・無道徳化

菊池由希子  国際関係専門家
 チェチェンのNGO「スパショム・パカレニエ」代表ザレーマ・サドゥラーエヴァとその夫アーリック・ジャブライーロフが、8月10日の午後にチェチェンの首都グロズヌイにある事務所から5人の覆面をした男たちに車で連行され、行方がわからなくなっていた事件は、11日の午前4時頃に彼女の夫の車のトランクから無数の銃の痕跡のある二人の遺体が見つかるという結末を迎えた。

 「スパショム・パカレニエ」は、私のイムラン基金だけでなく、ヨーロッパのNGO、ルーマニア名誉大使のドイツ人富豪、モナコの王室などから支援を受け、またユニセフの戦略的パートナーとして認められて、チェチェンにおける地雷教育や医療支援活動を行っていた。2006年にはザレーマがその活動を認められて、フランスで「今年の女性」に選ばれていた。

 彼女の活動は、先のナターシャ・エステミーロヴァのような人権擁護活動や反政府的な活動ではなく、あくまで人道的支援活動であった。チェチェンのカディロフ大統領は、夫が元戦士であったことから、「血の復讐による殺害だったのではないか」とインタビューで答えたが、血の復讐で女性が殺されることは、本来あり得べきでないことである。チェチェン政府がザレーマ夫婦の殺害を陰謀したことは、間違いない。ナターシャが殺害された時には、「女性が殺される」ということに衝撃を受けたが、今回はチェチェンの活動家の中では35歳と若手であるザレーマが殺害され、「若い活動家が殺される」ことに大きな衝撃を受けた。チェチェン社会の無法化・無道徳化が進行していることに懸念を抱く。

 イムラン基金では「スパショム・パカレニエ」に4,622ドルの支援をしたが、これは日本の皆さんから寄せられた善意のおかげである。そんな善意をさえ握りつぶすのが、現在のチェチェン親露政権、カディロフ政権であり、そのカディロフを支援するロシア政府である。チェチェンでは今、困っている人を助けず、真実を語らないことのみが、自分の身の安全を確保する最大限の防衛策となっている。
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