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2009-08-08 02:45

(連載)北朝鮮の核兵器にどう向かい合うか。(2)

阿部 信泰  日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター所長
 北朝鮮の行動、つまり核兵器・ミサイルのあくなき追求、武器・麻薬・偽造紙幣・模造商品などの密輸、拉致、テロなどは現代の国際的基準からすれば許しがたいことばかりであるが、北朝鮮の立場からすると、彼らなりに一つの理屈は通っているのかもしれない。つまり、北朝鮮は朝鮮戦争以来、休戦協定こそあるものの、依然として米国他の国連軍参加国と交戦状態にあり、韓国は国として認めていないし、日本とも国交はない。従って、戦争状態にあるわけだから、敵をかく乱し、敵戦力を弱めるために、こうしたものを密輸したり、スパイ養成に必要な人間を拉致したりするのは、当然であるという論理である。

 米英だって第二次戦争中にやっていたではないか、ということかもしれない。しかし、戦争状態終結から50年以上が経過し、一応平和が続いている状態で、そこまでするか。やはり「この国は異常だ」としか言いようがない。しかし、北の立場からすると、これだけ悪いことをしているだけに、事ある毎に米国から警告を受ける。するとこれを「脅威」と受け止め、防衛、そして究極的抑止力を獲得しようとする。それがまた米国、国際社会からの非難を招き、さらに被脅迫感を強める。悪循環としか言いようがない。

 このように当面、北朝鮮の強硬態度に変化が見られそうにないので、日本、米国、韓国などとしては、とりあえずは外交的解決の門戸を開けておいて、北朝鮮に核開発を止めるよう圧力をかけ続けていくしかないように思われる。核兵器やミサイル開発に使われる汎用品の輸出規制強化、資金供与の規制、核兵器とミサイル関連物質を含む武器の輸出禁止などは、圧力をかけるための経済制裁であると同時に、北の核戦力獲得を遅らせ、第三国あるいは最悪の場合テロリストなどに、これらを渡さないための国際社会の集団的な自己防衛の措置でもある。北朝鮮は経済制裁程度では核開発を止めないし、近隣の大国が本気で経済制裁に協力しなければ意味がないという見方もある。確かにそうかもしれない。しかし、これは国際社会の自己防衛の意味もあるので、やらざるを得ない。

 また、日本としては、拉致問題への取り組みを続けるべきである。他の6者協議関係者からはときどき「雑音扱い」されるが、日本はあきらめるべきではない。何万人の命にかかわる核兵器は勿論大事だが、一人一人の人権、一生も決してそれに劣らず重要だ。一人の人間を救えない外交は、ましてや何万人の命も救えない。北朝鮮の人権、人道問題はアメリカでもヨーロッパでも問題になっており、日本は積極的に国際的な連携を強め、粘り強く解決を図るべきだ。(つづく)
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