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2009-08-07 07:38

「ぶれ」は鳩山の「資質」の問題

杉浦正章  政治評論家
 ここまでくると、「ぶれ」と言うより代表・鳩山由紀夫の「資質」の問題だろう。優柔不断さがマニフェストの訂正に次ぐ訂正を繰り返し、発表した本人が「正式なものではない」と言うまでに至った。そして米国との自由貿易協定(FTA)問題の訂正だ。農家の票を一挙に失いかねないと、真っ青になった方針転換だ。そして政権奪取後にかならずぶれると予想されるものがある。それは超目玉の「国家戦略局」だ。そんなものを作っていては、とても予算の年内編成に間に合うまい。ほとんど「ビョーキ」と思えるほどのぶれを見せる鳩山だが、今朝7日の読売新聞の世論調査では「首相候補にふさわしいかどうか」の支持率が、前回の40%から47%に上がっている。有権者の意識は「鳩山ええじゃないか」に、阿波踊りの「鳩山えらいやっちゃ」が加わって、もはや“熱病”の域にある。

 「給油継続」を「継続しない」、「局長クビ」を「クビにしない」、「消費税は議論もしない」を「議論する」と、大きい話だけでもこれだけある。これに加えて、超ど級の訂正がFTAだ。マニフェストで米国との「協定締結」の文言を盛り込んだが、鳩山はその与える影響を理解していなかった。自分の選挙区を、協定の直撃を受ける北海道に持ちながらである。「しめた」とばかりに、首相・麻生太郎が食いついた。「日本が米国の農産物と価格競争で勝てると思うか」と分かりやすく切り返した。泡を食った鳩山は、表現を「締結」から「交渉を促進」に後退させることを決めた。「愚直にやる」と一般消費税導入を明言して衆院選挙に突入しようとした大平正芳が、ごうごうたる世論の反対と自民党内の動きに押されて、衆院選公示日の第一声で導入構想の撤回に追い込まれたケースとそっくりだ。

 問題は、この「大ぶれ」が政権に就いた後も確実に継続することだ。まず予想されるのが、超目玉公約の官僚主導から政治主導に切り替える「脱官僚」だ。その根幹は、鳩山直属の「国家戦略局」を設置し、「予算の骨格」を作成することになっている。しかし既に予算は動き出している。公約通りなら各省の概算要求は白紙に戻り、予算要求もやり直さざるを得まい。ところが「国家戦略局」の設置は立法措置が必要だ。政権が9月中旬に発足して、臨時国会を召集して、法案を成立させ、概算要求を白紙に戻して再提出させ、100人送り込んだ政治家にチェックさせるなどしていたら、年内編成はおろか来年の通常国会召集日にも間に合うまい。2月、3月になる可能性すらある。

 したがって鳩山は、ここでぶれる。公約を撤回して、とりあえず従来の機構の上に乗った予算編成をしようとするだろう。何のことはない、多少取り繕って目玉の強弱は出しても、目の敵の「官僚」の手のひらで踊らざるを得ないのだ。なぜなら、この大不況時に「年内編成断念」となれば、東京発の株価大暴落が世界中を駆け巡るからだ。しかし、民主党は政権を取ってしまえばこっちのもの。憶面もなく、対米安保問題と同様に、現実路線に転換してゆくだろう。それでも「ええじゃないか」と「えらいやっちゃ」は継続する。これまでのところ自民党は、この流れを覆す有力な手段を入手していない。総じて反論も元気がない。何でも「おっしゃる」という「おっしゃる坊ちゃん」が、飽きられるのは選挙後を待たなければならない。
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