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2009-07-31 09:31

(連載)人民元は”基軸通貨”になれるか(3)

中岡 望  ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
 さらに中国人民銀行はアルゼンチン、インドネシア、マレーシア、韓国などと通貨のスワップ協定を結び、これらの国が中国から品物を輸入する際に人民元が必要となれば融資する制度を構築している。さらに香港の銀行に人民元建ての債券の発行を認め、人民元のオフショア市場の育成に乗り出している。こうした政策を通して貿易や資産運用で人民元を利用できる道を開くことで、人民元を国際通貨にしようとしているのである。

 しかし、人民元がドルに取って代わる国際通貨になるには多くの障害がある。中国為替管理局助理の胡暁煉も「新しい準備通貨制度を再構築するには時間がかかる」と述べている。そのため中国は当面はドルに代わってSDRの役割を高める主張を戦略的にしていると思われる。最終的な狙いは、人民元を準備通貨として認知させることにあるのは間違いない。しかし、中国の貿易量が増えたとしても、それだけでは準備通貨として認知されるのは無理である。

 人民元の自由な市場が必要である。貿易決済通貨として貿易業者が決済資金を自由に調達できる市場が必要である。また準備通貨として累積された人民元を運用する自由な市場も不可欠である。だが、中国にはそうした自由な市場は存在しない。果たして中国がそうした自由な市場を作る覚悟があるかどうか分からない。人民元の自由な国際市場がない限り、いかに貿易量が増えても、人民元はローカル通貨に止まらざるをえないだろう。

 ドルが基軸通貨の地位を享受しているのは、戦後のドル金本位制のブレトン・ウッズ体制の名残もあるが、ドルを自由に取引きでき、運用できる底の深い市場が存在するからである。中国の人民元がドルに匹敵するか、それを凌駕する準備通貨になることがあるとしても、それは遠い将来のことである。それが実現する日が来るとすれば、中国の政治・経済体制も大きな変貌を遂げているだろう(おわり)
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