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2009-07-30 07:38

自民党は安保論争に比重を移せ

杉浦正章  政治評論家
 俳句で言えば、自民党マニフェストは“類想句”だ。この時点で、民主党と同じような子育て支援を公約しても、何の役にもたたない。それよりも立党の原点に返って、国論を2分した安保論争を前面に打ち出して、論議を展開すべきだ。民主党がインド洋での給油中止で旧社会党に先祖帰りしている絶好の機会をなぜ捉えないのだろうか。過去の解散の歴史をみても、国の安全保障をテーマにした解散では、自民党が勝利を収めているのだ。民主党代表・鳩山由紀夫は、いったん継続としたインド洋での給油方針をまた翻し、1月以降継続しない方針を決めた。明らかに給油を憲法違反としてきた前代表・小沢一郎の路線への回帰である。2度にわたる“大ぶれ”の背後には、党内左派や教条的な社民党路線の影が見られる。そもそも給油問題は根幹に安全保障上の理念の違いが存在しており、自民党の立党の精神から言っても譲れないし、戦後の旧社会党が「安保反対」を立党の原点としてきたことからいっても、重要な対立軸となり得る。もちろん米国は民主党に「給油反対は反米とみなす」(元国防次官補・ジョセフ・ナイ)との立場である。

 翻って東アジア情勢をみれば、北朝鮮は核兵器とミサイルを製造し続けており、中国の軍事費は世界第2位の849億ドル(約8兆3500億円)に達している。もちろんアフガニスタンにおけるテロ抑止も道半ばである。そういう状況下における民主党の給油中止方針は、安全保障が天から降ってくるという旧社会党の思想をそのまま継承しているものにほかならない。ここは、自民党のとって譲れぬ一線であるはずだ。首相・麻生太郎はマニフェスト作成に当たって安保・防衛を重視するように指示しているが、これは正しい。

 しかし、マニフェストに取りかかっている幹事長・細田博之を始め、菅義偉にしても安全保障問題での問題意識が希薄だ。マニフェストでは一応給油継続をうたってはいるし、集団的自衛権の政府見解見直しを含め、憲法との関係を整理し、安全保障の法的基盤の再構築を行う、と画期的な方向転換を見せてはいる。しかし、力点の置き方が民主党に引っ張られているのだ。PRの仕方が下手なのだ。全国紙の主見出しをオリジナリティで確保しなければ訴求力がない。焦点が、民主党への内政上の対抗策に傾く傾向を見せている。選挙は相手のペースにはまっては勝ち目がない。小泉解散の是非はさておき、小泉は郵政改革という一点突破主義で成功している。

 過去の例を見ても、安全保障がテーマの解散・総選挙では自民党が勝利している。1960年の「安保解散」で自民党は、安保闘争の痛手にもかかわらず、予想に反して議席を増やしている。1969年の「沖縄解散」でも自民党は圧勝している。有権者は外交・安保というと「我に返る」傾向があるのだ。ここは、自民党が日米安保体制重視の立党の原点に返り、国の命運を左右する外交・安保問題に焦点を絞り、対立軸を明確にした選挙戦を展開すべきである。国民に国の置かれた危機的状況を改めて示し、民主党の社会党先祖返りを指摘して、「目を覚ませ」と訴えるのだ。“類想句”をいくら作っても、民主党ペースは変わらない。
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